これまでに評価した活断層の評価概要
地震調査委員会事務局
平成15年2月12日
1.これまでに評価した活断層の評価概要
・糸魚川−静岡構造線活断層系(北部、中部、南部) (平成8年)
「牛伏寺断層を含む区間では、現在を含めた今後数百年以内に、M(マグニチュード)8程度(M7 1/2−8 1/2)の規模の地震が発生する可能性が高い。」
・神縄・国府津−松田断層帯(平成9年)
「現在を含む今後数百年以内に、M8程度(M8±0.5)の規模の地震が発生する可能性がある。」
・富士川河口断層帯(平成10年)
「M8程度(M8±0.5)、震源域は駿河湾内にまで及ぶと考えられる。その時期は、今後数百年以内の比較的近い将来である可能性がある。」
・鈴鹿東縁断層帯(平成12年)
「Mが最大7.5程度。発生時期については、最新の活動時期が十分特定できないため判断できない。」
・元荒川断層帯(平成12年)
「上尾市付近を境に北部と南部に分けられ、北部のみが活断層と判断される。」
・東京湾北縁断層(平成12年)
「活断層ではないと判断される。」
・岐阜−一宮断層帯(平成13年)
「活断層ではないと判断される。」
・生駒断層帯(平成13年)
「M7.0−7.5程度の地震が発生すると推定される。将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−0.1%)その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・有馬−高槻断層帯(平成13年)
「断層帯のうち、少なくとも東部では、M7.5程度(±0.5)の地震が発生すると推定される(30年確率:ほぼ0%−0.02%)。断層帯の西部については資料が少なく判断できない。」
・北上低地西縁断層帯(平成13年)
「M7.8程度の地震が発生する可能性がある(30年確率:ほぼ0%)。」
・函館平野西縁断層帯(平成13年)
「M7.0−7.5程度の地震が発生すると推定される。将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−1%)その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・京都盆地−奈良盆地断層帯南部(奈良盆地東縁断層帯)(平成13年)
「M7.5程度の地震が発生すると推定される。過去の活動が十分に明らかではないため信頼度が低く、将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−5%)その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
・信濃川断層帯(長野盆地西縁断層帯)(平成13年)
「M7.5−7.8程度の地震が発生すると推定される(30年確率:ほぼ0%)。」
・養老−桑名−四日市断層帯(平成13年)
「M8程度の地震が発生すると推定される。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−0.6%)、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・森本・富樫断層帯(平成13年)
「M7.2程度の地震が発生すると推定される。過去の活動が十分に明らかではないため信頼度が低いが(30年確率:ほぼ0%−5%)、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
・長町−利府線断層帯(平成14年)
「M7.0−7.5程度の地震が発生する可能性がある。最新活動時期が十分に特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めているが(30年確率:1%以下)、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・山形盆地断層帯(平成14年)
「M7.8程度の地震が発生する可能性がある。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−7%)、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
・伊勢湾断層帯(平成14年)
断層帯主部
「断層帯主部北部では、M7.2程度の地震が発生すると推定される(30年確率:ほぼ0%)。断層帯主部南部では、M6.8程度の地震が発生すると推定される(30年確率:ほぼ0%−0.002%)。また、北部、南部が同時に活動する場合はM7.5程度の地震が発生する可能性もある。」
白子−野間断層
「M7.0程度の地震が発生すると推定される。将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−0.8%)、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、わが国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・布田川・日奈久断層帯(平成14年)
「北東部では、M7.2程度の地震が発生すると推定される(30年確率:ほぼ0%)。中部では、M7.5程度の地震が発生すると推定される(30年確率:ほぼ0%−6%(ケース1*)、0.03%−2%(ケース2*))。南西部では、M7.2程度の地震が発生すると推定されるがその長期確率は不明である。中部と南西部は同時に活動する可能性も否定できない。この場合はM8.0程度の地震が発生すると推定される。将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが、その最大値をとると、本断層帯の中部区間は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
*中部では過去の活動履歴の解釈から、将来の活動に二つの可能性(ケース1、2)が考えられる。
・新庄盆地断層帯(平成14年)
「M6.5−7.0程度の地震が発生する可能性がある。最新活動時期が特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めいるが(30年確率:0.8%−2%)、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・伊那谷断層帯(平成14年)
「境界断層が単独で活動すると、M7.7程度の地震が発生すると推定され、前縁断層が単独で活動する場合はM7.8程度の地震が発生すると推定される。境界断層と前縁断層が同時に活動すると、M8.0程度の地震が発生すると推定される。本評価で得られた地震発生の長期確率にはいずれも幅があるが(30年確率 境界断層:ほぼ0%−7%、前縁断層:ほぼ0%−6%)、その最大値をとると、境界断層及び前縁断層ともに、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中では高いグループに属することになる。」
・櫛形山脈断層帯(平成14年)
「M6.8−7.5程度の地震が発生し、活動する範囲は、本断層帯の延長部や月岡断層帯にも及ぶ可能性がある。過去の活動が十分に明らかではないため信頼度は低く、本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−7%)、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中では高いグループに属することになる。」*
*確率値が最大となる時の地震規模はM6.8程度である。また、今後30年以内の地震発生確率が3%以上となる場合の地震の規模はM7.2程度以下である。M7.5程度の場合、今後30年以内の地震発生確率は0.5%未満である。
・月岡断層帯(平成14年)
「M7.3程度の地震が発生する可能性がある。本評価で得られた地震発生の長期確率には幅があるが(30年確率:ほぼ0%−1%)、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・三浦半島断層群(平成14年)
断層群主部
「衣笠・北武断層帯では、少なくともMが6.7程度の地震が発生すると推定されるが、他のデータをもとに計算により求めると、M7.0程度もしくはそれ以上となる可能性もある。武山断層帯では、M6.5程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定される。また、断層群主部全体が同時に活動する場合は、衣笠・北武断層帯が単独で活動する場合と同程度もしくはそれ以上の規模の地震が発生すると推定される。断層群主部全体が活動する場合は、衣笠・北武断層帯が単独で活動する場合と同程度もしくはそれ以上の規模の地震が発生すると推定される。本評価で得られた地震発生の長期確率にはそれぞれ幅があるが(30年確率 衣笠・北武断層帯:ほぼ0%−3%、武山断層帯:6%−11%)、衣笠・北武断層帯、武山断層帯ともに、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
断層群南部
「南部は、M6.0程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定されるが平均活動間隔が不明であるため、その長期確率を求めることはできない」。
・砺波平野断層帯・呉羽山断層帯(平成14年)
砺波平野断層帯西部
「マグニチュード7.2程度の地震が発生する可能性がある。将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが(30年確率 ほぼ0%−3%もしくはそれ以上)、その最大値をとると、本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
砺波平野断層帯東部
「マグニチュード7.3程度の地震が発生する可能性がある。将来このような地震が発生する長期確率には幅があるが(30年確率 0.05%−6%)、その最大値をとると,本断層帯は今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになる。」
呉羽山断層帯
「マグニチュ−ド7.2程度の地震が発生すると推定される。最新活動時期が特定できていないことから、通常の活断層評価とは異なる手法により地震発生の長期確率を求めいるが(30年確率:0.6%−1%)、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになる。」
・中央構造線断層帯(金剛山地東縁−伊予灘)
「金剛山地東縁から和泉山脈南縁の和歌山市付近に至る区間が活動すると、マグニチュード8.0程度の地震が発生する可能性がある。
和歌山市付近もしくはその西側の紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間が活動すると、マグニチュード7.7程度の地震が発生する可能性がある。
讃岐山脈南縁から石鎚山脈北縁東部の石鎚断層に至る区間が活動すると、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生する可能性がある。
石鎚山脈北縁の岡村断層が活動すると、マグニチュード7.3−8.0程度の地震が発生する可能性がある。
石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間が活動すると、マグニチュードが8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生する可能性がある。
断層帯全体が同時に活動する場合は、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定される。
本評価で得られた地震発生の長期確率にはいずれも幅があるが、その最大値をとると、金剛山地東縁から和泉山脈南縁に至る区間(30年確率 ほぼ0%〜5%)は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中では高いグループに属することになる。また、紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間(30年確率 0.005%〜1%)、讃岐山脈南縁から石鎚山脈北縁東部の石鎚断層に至る区間(30年確率 ほぼ0%〜0.3%)、石鎚山脈北縁の岡村断層からなる区間(30年確率 ほぼ0%〜0.3%)、及び石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間(30年確率 ほぼ0%〜0.3%)は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の活断層の中ではやや高いグループに属することになる。
各断層帯における地震発生確率
表1 陸域の活断層から発生する地震の確率算出に用いたデータ
表2 陸域の活断層から発生する地震の今後30,50,100年以内の地震発生確率
(*注1:「ほぼ0%」は10−3%未満の確率値を示す。)
(注2:今後地震調査委員会は,「全国を概観した地震動予測地図」を作成することとしている。この作成には最新活動時期が十分特定できない断層帯についても,何らかの確率の値が必要となる。表2には,そのような事例についても掲載してある。即ち,他の活断層に用いた更新過程モデルであるBPT分布が適応できず,指数分布モデルであるポアソン分布を用いた鈴鹿東縁断層帯、長町−利府線断層帯、新庄盆地断層帯及び砺波平野断層帯の中に位置付けられる呉羽山断層帯についても掲載した。これらの断層帯については,今後最新活動時期がある程度の信頼度を持って特定できた場合、上に示した値から大きく変わる可能性もある。)
(※注3:活断層の評価では個々の精度を判断し,長期評価においては多くの場合有効数字1桁として発表している。「糸魚川−静岡構造線断層帯」、「神縄・国府津−松田断層帯」及び「富士川河口断層帯」については、長期評価を発表した際には確率を示していなかった。)
(§注4:「糸魚川−静岡構造線断層帯」、「神縄・国府津−松田断層帯」、「富士川河口断層帯」及び「鈴鹿東縁断層帯」については、評価公表当時は我が国の主な活断層における相対的評価を行っていない。そのため、今回新たに当てはめたものである。また、「鈴鹿東縁断層帯」については計算方法が異なる(注2参照)ため注意が必要である。)
(○注5:確率値が最大となる時の地震規模はM6.8程度である。また、今後30年以内の地震発生確率が3%以上となる場合の地震の規模はM7.2程度以下である。M7.5程度の場合、今後30年以内の地震発生確率は0.5%未満である。)