平成26年4月9日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 |
○ 3月14日に伊予灘でマグニチュード(M)6.2の地震が発生した。この地震により、愛媛県で最大震度5強を観測し、負傷者が出るなどの被害を生じた。
目立った活動はなかった。
○ 3月17日に福島県沖の深さ約35kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、陸のプレート内で発生した地震である。
○ 東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。
○ 3月14日に伊予灘の深さ約80kmでM6.2の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ型で、沈み込むフィリピン海プレート内部で発生した地震である。
○ 3月3日に沖縄本島北西沖の深さ約120kmでM6.4の地震が発生した。この地震の発震機構はフィリピン海プレートが沈み込む方向に圧力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。
○ 3月3日に沖縄本島近海の深さ約45kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○ 3月26日に薩南諸島東方沖でM5.3の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、南西諸島海溝の東側のフィリピン海プレート内部で発生した地震である。
○ 3月19日に台湾付近の深さ約20kmでM6.0の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に圧力軸を持つ型であった。
○ 4月2日8時46分(日本時間)に、チリ北部沿岸でモーメントマグニチュード(Mw)8.1の地震が発生した。この地震により、久慈港(岩手県)で0.6m(速報値)の津波を観測するなど、北海道から九州地方にかけての太平洋沿岸および伊豆・小笠原諸島で津波を観測した。この地震の発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、ナスカプレートと南米プレートの境界で発生した地震である。
この地震の震源付近では3月17日にM6.7の地震が発生し、その後地震活動が続いていた。
注: 〔 〕内は気象庁が情報発表で用いた震央地域名である。
GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。
平成26年4月9日 地震調査委員会 |
2014年3月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ72回(2月は79回)および13回(2月は10回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は3回(2月は0回)であった。
(参考) | M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、 |
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、 | |
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値) |
2013年3月以降2014年2月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。
− 淡路島付近 | 2013年4月13日 M6.3(深さ約15km) |
− 三宅島近海 | 2013年4月17日 M6.2(深さ約10km) |
− 宮城県沖 | 2013年4月17日 M5.9(深さ約60km) |
− 福島県沖 | 2013年5月18日 M6.0(深さ約45km) |
− 宮城県沖 | 2013年8月4日 M6.0(深さ約60km) |
− 福島県浜通り | 2013年9月20日 M5.9(深さ約15km) |
− 福島県沖 | 2013年10月26日 M7.1 |
− 茨城県南部 | 2013年11月10日 M5.5(深さ約65km) |
− 茨城県北部 | 2013年12月31日 M5.4(深さ約5km) |
北海道地方では特に補足する事項はない。
東北地方では特に補足する事項はない。
− 東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したM4.0以上の地震の発生数は、東北地方太平洋沖地震後の約1年間と比べて、その後の1年間(2012年3月〜2013年2月)では5分の1以下、2年後からの1年間(2013年3月〜2014年2月)では10分の1以下にまで減少してきている。
2004年に発生したスマトラ北部西方沖の地震(Mw9.1)では、4ヵ月後にMw8.6、約2年半後にMw8.5、約5年半後にMw7.5、約7年半後に海溝軸の外側の領域でMw8.6の地震が発生するなど、震源域およびその周辺で長期にわたり大きな地震が発生している。
GNSS連続観測によると、東北地方から関東・中部地方の広い範囲で余効変動と考えられる地殻変動が引き続き観測されている。地殻変動量は、東北地方太平洋沖地震直後からの約1ヶ月間で、最大で水平方向に30cm、上下方向に6cmの沈降と5cmの隆起であったものから、最近1ヶ月あたりでは水平方向に最大1cm程度、上下方向には1cm前後と小さくなっている。
余震活動は全体として徐々に低下している傾向にあると見てとれるものの、依然として東北地方太平洋沖地震前の地震活動より活発な状況にあることや、他の巨大地震における事例から総合的に判断すると、今後も長期間にわたって余震域やその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があるので、引き続き注意が必要である。
−「東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
(なお、これは、3月24日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地殻活動(平成26年3月24日気象庁地震火山部)
「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測していません。
1.地震の観測状況
浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度の低い状態が続いています。
3月20日から22日にかけて、長野県南部のプレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)を観測しました。
2.地殻変動の観測状況
GNSS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。
3月20日から22日にかけて、長野県と静岡県の複数のひずみ観測点でわずかな地殻変動を観測しました。
3.地殻活動の評価
上記観測結果を総合的に判断すると、東海地震の想定震源域におけるプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られていません。
一方、長野県南部で観測した深部低周波地震(微動)及び長野県と静岡県のひずみ観測点で観測した地殻変動は、長野県南部の東海地震の想定震源域より深いプレート境界において、3月下旬に発生した「短期的ゆっくりすべり」に起因すると推定しています。
以上のように、現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測していません。
なお、GNSS観測の結果によると「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が、小さくなりつつありますが東海地方においてもみられています。」
近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。
九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。
−「4月2日8時46分(日本時間)に、チリ北部沿岸でモーメントマグニチュード(Mw)8.1の地震が発生した。(以下、略)」:
この付近では1868年にM8.5、1877年にM8.3の地震が発生し、これらの地震に伴う津波は日本の太平洋沿岸に及んだ。
参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
①M6.0以上または最大震度が4以上のもの。②内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。③海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。
参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。