平成25年1月11日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 |
○ 12月7日に三陸沖でマグニチュード(M)7.3の地震が発生し、最大震度5弱を観測した。この地震により、石巻市鮎川(宮城県)で98cmなど、東北地方の太平洋沿岸で津波を観測した。また、死傷者が出るなどの被害が生じた。
目立った活動はなかった。
○ 12月4日に秋田県内陸南部の深さ約10kmでM4.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 12月7日17時18分に三陸沖でM7.3の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に張力軸を持つ正断層型の地震で、日本海溝付近の太平洋プレート内で発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」の余震である。また、この地震が発生する直前に、この地震の震源近傍で、発震機構の異なるM7クラスと推定される地震が発生した。
これらの地震により、石巻市鮎川(宮城県)で98cmなど、東北地方の太平洋沿岸で津波を観測した。
同日17時31分には、これらの地震の震源近傍でM6.6の地震が発生したほか、10日までにM5.0以上の地震が8回発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 12月15日に福島県沖の深さ約60kmでM5.3の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。
○ 12月29日に宮城県沖の深さ約40kmでM5.5の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○ 12月7日に千葉県北西部の深さ約65kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
○ 12月15日に茨城県沖でM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、陸のプレートの地殻内で発生した地震である。
○ 東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。
○ 12月22日に伊予灘の深さ約45kmでM4.5の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、フィリピン海プレート内部で発生した地震である。
目立った活動はなかった。
○ 1月3日に留萌地方中北部の深さ約25kmでM4.8の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 1月7日に与那国島近海の深さ約70kmでM5.4の地震が発生した。この地震はフィリピン海プレート内部で発生した地震である。
○ 1月8日に岩手県沖の深さ約35kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
注: GNSSとは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称である。
平成25年1月11日 地震調査委員会 |
2012年12月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ226回(11月は96回)および23回(11月は12回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は2回(11月は0回)で、2012年は12月までに21回発生している。
(参考) | M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、 |
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、 | |
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値) |
2011年12月以降2012年11月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。
− 福島県沖 | 2012年1月23日 M5.1(深さ約50km) |
− 山梨県東部・富士五湖 | 2012年1月28日 M5.4(深さ約20km) |
− 佐渡付近 | 2012年2月8日 M5.7(深さ約15km) |
− 茨城県北部 | 2012年2月19日 M5.2(深さ約5km) |
− 茨城県沖 | 2012年3月1日 M5.3(深さ約55km) |
− 茨城県北部 | 2012年3月10日 M5.4(深さ約5km) |
− 三陸沖 | 2012年3月14日 M6.9 |
− 千葉県東方沖 | 2012年3月14日 M6.1(深さ約15km) |
− 岩手県沖 | 2012年3月27日 M6.6(深さ約20km) |
− 福島県沖 | 2012年4月1日 M5.9(深さ約55km) |
− 千葉県北東部 | 2012年4月29日 M5.8(深さ約50km) |
− 青森県東方沖 | 2012年5月24日 M6.1(深さ約60km) |
− 長野県北部 | 2012年7月10日 M5.2(深さ約10km) |
− 十勝地方南部 | 2012年8月25日 M6.1(深さ約50km) |
− 宮城県沖 | 2012年8月30日 M5.6(深さ約60km) |
− 宮城県沖 | 2012年10月25日 M5.6(深さ約50km) |
北海道地方では特に補足する事項はない。
東北地方では特に補足する事項はない。
−平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余震域では、活発な地震活動が見られる。今後も引き続き規模の大きな余震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある。また、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる東向きの地殻変動が観測されているが、徐々に小さくなってきている。
「東海地方のGNSS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
(なお、これは、12月17日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成24年12月17日気象庁地震火山部)
「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていません。
1.地震活動の状況
静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
その他の領域では概ね平常レベルです。
なお、伊勢湾周辺のプレート境界付近において、11月21日から11月26日にかけて深部低周波地震が観測されました。
2.地殻変動の状況
全般的に注目すべき特別な変化は観測されていません。
GNSS※観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状況の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。
なお、上記の深部低周波地震活動と同期して、伊勢湾周辺のプレート境界付近に生じた「短期的ゆっくりすべり」に起因するとみられる地殻変動が、11月21日から11月26日にかけて、周辺のひずみ計で観測されました。
また、GNSS※観測の結果によると、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が、小さくなりつつありますが東海地域においてもみられています。
※GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とはGPSをはじめとする衛星測位システム全般をしめす呼称。」
近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。
九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。
参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
M6.0以上または最大震度が4以上のもの。内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。
参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。