平成23年7月11日 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 |
○ 6月2日に新潟県中越地方でマグニチュード(M)4.7の地震が発生した。この地震により新潟県で最大震度5強を観測し、被害を生じた。
○ 6月23日に岩手県沖でM6.9の地震が発生した。この地震により青森県と岩手県で最大震度5弱を観測し、被害を生じた。
○ 6月30日に長野県中部でM5.4の地震が発生した。この地震により長野県で最大震度5強を観測し、重傷者が出るなどの被害を生じた。
○ 6月14日に釧路沖の深さ約75kmでM5.1の地震が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した地震である。発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○ 6月25日に浦河沖の深さ約55kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、陸のプレートと太平洋プレートの境界で発生した地震である。
○ 6月18日に福島県中通りの深さ約15kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に張力軸を持つ型で、地殻内で発生した地震である。
○ 6月23日に岩手県沖の深さ約35kmでM6.9の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、S普代観測点(岩手県)が約2cm東に移動するなどの地殻変動が観測されている。
○ 6月2日11時33分に新潟県中越地方の深さ約5kmでM4.7の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ型で、地殻内で発生した地震である。同日12時51分にM4.1の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。
○ 6月3日に茨城県南部の深さ約60kmでM4.5の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
○ 6月30日に千葉県北東部の深さ約50kmでM4.6の地震が発生した。この地震の発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震である。
○ 6月30日に長野県中部の深さ約5kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、震央付近で小さな地殻変動が観測されている。
○ 東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていない。
○ 6月4日に島根県東部の深さ約10kmでM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 6月28日に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.2の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 7月3日に福島県会津の深さ約10kmでM3.9の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 7月5日に和歌山県北部の深さ約5kmでM5.5の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。
○ 7月10日に三陸沖でM7.3の地震が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した地震である。発震機構は西北西−東南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型(速報)であった。この地震により、大船渡(岩手県)と相馬(福島県)で0.1mの津波を観測した。
平成23年7月11日 地震調査委員会 |
2011年6月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ276回(5月は377回)および28回(5月は37回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は4回で、2011年は6月までに99回発生している。
(参考) | M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、 |
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、 | |
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値) |
2010年6月以降2011年5月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。
− 福島県沖 | 2010年6月13日 M6.2(深さ約40km) |
− 千葉県北東部 | 2010年7月23日 M5.0(深さ約35km) |
− 新潟県上越地方 | 2010年10月3日 M4.7(深さ約20km) |
− 宮古島近海 | 2010年10月4日 M6.4 |
− 父島近海 | 2010年12月22日 M7.4 |
− 三陸沖 | 2011年3月9日 M7.3 |
− 東北地方太平洋沖地震 | 2011年3月11日 M9.0(深さ約25km) |
− 静岡県伊豆地方 | 2011年3月11日 M4.6(深さ約5km) |
− 長野県・新潟県県境付近 | 2011年3月12日 M6.7(深さ約10km) |
− 静岡県東部 | 2011年3月15日 M6.4(深さ約15km) |
− 茨城県北部 | 2011年3月19日 M6.1(深さ約5km) |
− 福島県浜通り | 2011年3月23日 M6.0(深さ約10km) |
− 茨城県南部 | 2011年3月24日 M4.8(深さ約50km) |
− 秋田県内陸北部 | 2011年4月1日 M5.0(深さ約10km) |
− 茨城県南部 | 2011年4月2日 M5.0(深さ約55km) |
− 宮城県沖 | 2011年4月7日 M7.1(深さ約65km) |
− 福島県浜通り | 2011年4月11日 M7.0(深さ約5km) |
− 長野県北部 | 2011年4月12日 M5.6(深さごく浅い) |
− 千葉県東方沖 | 2011年4月12日 M6.4(深さ約25km) |
− 茨城県南部 | 2011年4月16日 M5.9(深さ約80km) |
− 長野県・新潟県県境付近 | 2011年4月17日 M4.9(深さ約10km) |
− 秋田県内陸南部 | 2011年4月19日 M4.9(深さ約5km) |
− 千葉県東方沖 | 2011年4月21日 M6.0(深さ約45km) |
− 福島県浜通り | 2011年5月6日 M5.2(深さ約5km) |
北海道地方では特に補足する事項はない。
「6月18日に福島県中通りの深さ約15kmでM4.6の地震が発生した。(以下、略)」:
この地震以外にも、福島県浜通りから茨城県北部の領域にかけてM4.0以上の地震が8回発生するなど、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の発生後から活発な地震活動が続いている。
−秋田県内陸南部と福島県会津では3月中旬からまとまった地震活動が見られている。
−3月11日に発生した平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余震域では、個別に評価した地震以外にも、最大震度5弱を観測する地震が発生するなど、活発な地震活動が見られる。今後も引き続き規模の大きな余震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある。また、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる東向きの地殻変動が観測されている。
「6月30日に長野県中部の深さ約5kmでM5.4の地震が発生した。(以下、略)」:
この地震の発生後、同日08時21分にM5.1の地震が発生するなどのまとまった地震活動が見られている。今回の地震の震源の東側に糸魚川−静岡構造線断層帯(牛伏寺断層を含む区間)が存在しており、余震の一部は牛伏寺断層の近傍で発生している。
「東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていない。」:
(なお、これは、6月27日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成23年6月27日気象庁地震火山部)
「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。
1.地震活動の状況
静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
その他の領域では概ね平常レベルです。
2.地殻変動の状況
全般的に注目すべき特別な変化は観測されていません。
GPS観測の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域及びその周辺におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状態の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。
なお、GPS観測の結果によると、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が東海地域においてもみられています。」
近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。
「6月28日に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.2の地震が発生した。(以下、略)」:
この付近では、4月25日にM4.1の地震が発生するなど、4月中旬からまとまった地震活動が続いている。
参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
M6.0以上または最大震度が4以上のもの。内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。
参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。