平成16年12月8日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会


2004年11月の地震活動の評価


1 主な地震活動

○  11月29日に釧路沖の深さ約50kmでマグニチュード(M)7.1の地震が発生した(第135回地震調査委員会評価文「釧路沖の地震活動の評価」参照)。この地震により、北海道で最大震度5強を観測し、北海道太平洋沿岸東部で微弱な津波が観測された。また、これまでの最大の余震は、12月6日に発生したM6.9(最大震度5強)の地震である。これらの地震活動により、負傷者が出るなどの被害が生じた。 補足説明へ

2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

○  11月7日にオホーツク海南部の深さ約510kmでM6.0の深発地震が発生した。
○  11月4日に国後島付近の深さ約60kmでM5.8の地震が発生した。発震機構は北北西−南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。
○  釧路沖の地震活動
11月29日に釧路沖の深さ約50kmでM7.1の地震が発生し、最大震度5強を観測した。地震活動は本震−余震型で推移し、余震活動は減衰しつつある。これまでの最大の余震は、12月6日のM6.9(最大震度5強)で、本震の南側で発生した。
本震付近では1961年8月12日にM7.2の地震が発生しており、この地震も今回と同様にプレート境界で発生したと考えられている。また、同年11月15日には、今回の活動域付近でM6.9の地震が発生している。
GPS観測結果によると、本震発生に際して北海道東部で数cm程度の変動が観測され、その後わずかな余効変動を伴った。また、12月6日の最大余震でも、北海道東部でわずかな変動が観測された。これらの地殻変動は、本震および最大余震の発震機構と整合している。
○  11月27日に十勝支庁南部の深さ約50kmでM5.6の地震が発生した。発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。
○  11月11日に釧路沖の深さ約40kmでM6.3の地震が発生した。発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。 補足説明へ

(2) 東北地方

○  11月5日に岩手県沖の深さ約50kmでM4.0の地震が発生した。
○  11月19日に宮城県沖の深さ約75kmでM4.5の地震が発生した。 補足説明へ

(3) 関東・中部地方

○  新潟県中越地方の地震活動
10月23日に発生した平成16年(2004年)新潟県中越地震の余震活動は、11月4日のM5.2と8日のM5.9の地震でそれぞれ最大震度5強を観測したが、10日のM5.3の地震(最大震度5弱)以降はM5.0以上の地震は発生しておらず、引き続き減衰傾向にある。
GPS観測結果によると、現在までに顕著な余効変動は観測されていない。なお、11月8日のM5.9の地震では、震央付近の守門(すもん)観測点(新潟県魚沼市守門/旧魚沼郡守門村)などでわずかな変動が観測された。
M3.0(震源地付近の小範囲で体に感じる程度)以上の余震の発生数は現在1日当たり平均して1回程度となっており、引き続きゆるやかに減少していくと推定される。なお、12月8日18時から3日以内にM5.0(ところによって震度5弱程度)以上が発生する確率は約10%と推定される。
今回の地震活動に伴って、魚沼市広神(旧広神村)小平尾地区において全長1km以上にわたる地表変形が確認された。地表変形は、ほぼ南北に延びており、西側が10〜15cm程度隆起している。これは、今回の活動域の地下深部における本震の震源断層の延長上に、その一部が表出した地表地震断層と考えられる。
○  11月9日に東海道沖でM5.7の地震が発生した。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレート内部の地震と考えられる。 補足説明へ

(4) 近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(5) 九州・沖縄地方

○  11月4日に福岡県筑後地方の深さ約15kmでM4.2の地震が発生した。
○  11月21日に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.1の地震が発生した。 補足説明へ

(6) その他

○  11月9日に台湾付近でM6.4の地震が発生した。

補足

○  12月1日に宮城県北部の深さ約75kmでM4.2の地震が発生した。
○  12月1日に京都府南部の深さ約15kmでM4.0の地震が発生した。


2004年11月の地震活動の評価についての補足説明

平成16年12月8日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

2004年11月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ126回(10月は165回)および27回(10月は29回)であった。また、M6.0以上の地震は5回で、2004年は11月までに19回発生している。なお、上記の月回数のうち、10月23日の新潟県中越地震とその余震活動によるものは、M4.0以上、M5.0以上、M6.0以上のそれぞれについて、20回、8回、および0回であった(10月については、M4.0以上、M5.0以上、M6.0以上のそれぞれについて、87回、18回、および5回であった)。また、11月29日の釧路沖の地震とその余震活動によるものは、M4.0以上、M5.0以上、M6.0以上のそれぞれについて、16回、2回、および2回であった。

(参考)1971−2000年の30年間の標準的な回数:
    M4.0以上の月回数46回、M5.0以上の月回数8回、M6.0以上の月回数1.3回、年回数約16回

2003年11月以降2004年10月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

   −房総半島南東沖(プレートの三重会合点付近)
2004年5月30日M6.7

−岩手県沖

2004年8月10日M5.8(深さ約50km)

−紀伊半島南東沖(東海道沖)
2004年9月5日M7.4
−茨城県南部 2004年10月6日M5.7(深さ約65km)
−与那国島近海 2004年10月15日M6.6
−新潟県中越地方(平成16年(2004年)新潟県中越地震)
2004年10月23日M6.8(深さ約10km)

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2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

「(釧路沖の地震活動)11月29日に釧路沖の深さ約50kmでM7.1の地震が発生し、最大震度5強を観測した。…(略)…これらの地殻変 動は、本震および最大余震の発震機構と整合している。」:
余震分布は、西北西−東南東方向に延びる形で約40kmにわたって数条に分かれて分布しており、本震は余震活動域のほぼ中央に位置している。また、最大余震は、本震の南側で発生した。

「11月11日に釧路沖の深さ約40kmでM6.3の地震が発生した。発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。」:
今回の地震は、平成15年(2003年)十勝沖地震の余震域内で発生した。また、11月15日には十勝沖地震の震央付近でM5.7の地震が発生した。GPS観測結果によると、十勝沖地震の発生後に観測された余効変動はごくわずかながら継続している。

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(2) 東北地方

−11月2日に宮城県沖の深さ約20kmでM5.4の地震が発生した。

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(3) 関東・中部地方

「11月9日に東海道沖でM5.7の地震が発生した。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレート内部の地震と考えられる。」:
地震活動は、前震−本震−余震型で推移し、10日間程度で収まった。

関東・中部地方では他に次の活動があった。
−9月5日に発生した紀伊半島南東沖の地震(M7.4)の余震活動は、順調に減衰している。活動域に特段の変化はみられない。また、この北東側の東海道沖では11月9日にM5.7の地震が発生したが、その前後の活動状況に変化はみられない。
−東海地域のGPS観測結果に2001年から認められた長期的な地殻変動の傾向には、2004年9月5日の紀伊半島南東沖の地震の前後で顕著な変化は見られない。
(なお、これは、11月29日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成16年11月29日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。

想定震源域内では顕著な地震活動はなく、浜名湖直下で通常より活動レベルの低い状態が継続しています。なお、東海道沖で11月9日にM5.7の地震が発生しましたが、想定震源域から離れており、東海地震への直接的影響はないと考えられます。
9月5日の東海道沖(紀伊半島南東沖)の地震M7.4に伴い東海地域でも地殻変動が広範囲に観測されましたが、主として、地震に伴うステップ状の変動と思われます。2001年の初め頃から続いている地殻変動の傾向に地震の前後で顕著な変化は見られません。 」

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(4) 近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では、特に補足する事項はない。

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(5) 九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では、特に補足する事項はない。

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補足
−12月2日から兵庫県北部(鳥取県との県境付近)の深さ約10kmで微小地震活動が始まり、3日にはM3.4の地震(最大震度2)が発生するなど活動が活発化したが、5日以降はほぼ収まりつつある。この付近では、2000年12月から2001年にかけて、2001年1月12日のM5.6(最大震度4)を最大とする活発な地震活動が観測されている。


参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
   M6.0以上のもの。または、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3以上のもの。
参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
  1  「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
  2  「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
  3  評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。