平成12年11月8日 |
地震調査研究推進本部 |
地震調査委員会 |
2000年10月の地震活動の評価
10月2日に、鹿児島県十島村(としまむら)悪石島(あくせきじま)付近(奄美大島近海)の深さ約10kmで、M5.7の地震が発生し、最大震度5強を悪石島で観測した。また、10月6日に、鳥取県西部の深さ約10kmで、M7.3(暫定)の地震が発生し、最大震度6強を鳥取県西部で観測した。さらに、10月31日に、三重県中部の深さ約40kmで、M5.5の地震が発生し、最大震度5弱を観測した。これらいずれの地震も被害を伴った。これらの地震は、各地域の特性に応じて発生したものであり、相互に直接の関係はないと考えられる。 補足説明へ
10月7日に、日高支庁東部の深さ約60kmで、M4.4の地震が発生した。この地震は、陸のプレートと沈み込む太平洋プレートとの境界付近で発生したものと考えられる。 補足説明へ
10月3日に、三陸沖で、M5.9の地震が発生した。発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。この地震は、「平成6年(1994年)三陸はるか沖地震」(M7.5)の余震域で発生したものである。 補足説明へ
○ 6月26日からの、三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動は、10月3日に三宅島西方約10kmでM4.4、10月31日に新島西方約10kmでM4.7の地震があったものの、9月よりも更に低調となった。また、地殻変動についても、9月同様、その変化はほぼ停止している。
○ 10月11日に、神奈川県東部の深さ約90kmで、M4.1のやや深発地震が発生した。この地震は、9月29日にほぼ同じ場所で発生したM4.5の地震の余震と考えられる。
○ 10月12日に、新潟県下越地方の深さ約10kmで、M4.1とM4.2の地震が2分の間をおいて続いて発生した。これらの地震の震源から20km程度の範囲では、M4.0以上の地震は10年から20年に1回発生している程度であり、今回の2つの地震は比較的活動が不活発な地域に発生したものである。
○ 10月18日に、栃木県北部の深さ約10kmで、M4.5の地震が発生した。この地震の発生後、この地震の震源付近で微小地震の活動が続き、10月19日にM4.0の地震が発生した。その後も微小地震の活動は続いていたが、10月末には低下した。
○ 10月27日に、父島近海の深さ約410kmで、M6.3の深発地震が発生した。この地震は、太平洋プレートの内部で発生したものと考えられる。
○ 10月31日に、三重県中部の深さ約40kmで、M5.5の地震が発生し、最大震度5弱を観測した。発震機構は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、この地震は太平洋側から北西に向かって沈み込むフィリピン海プレートの内部で発生したものと考えられる。この地震の発生後、震源付近で引き続き地震活動があったが、活動レベルは徐々に低下し、2日経過後には地震はほぼ観測されなくなった。これまでの地震活動は本震−余震型であると考えられ、余震は二日間で約20回観測された。
○ 静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来の低い活動レベルの状態が続いている。一方、東海地方の掛川−御前崎間のGPS観測の結果には、従来の変化傾向から変わるものは見られていない。 補足説明へ
10月6日に、鳥取県西部の深さ約10kmで、M7.3(暫定)の地震が発生し、鳥取県西部で最大震度6強を観測し、その後、余震活動が続いた。10月下旬にはM3.0以上の地震の発生数は、平均して1日当り2〜3回となり、余震活動は低下してきている(別項参照)。 補足説明へ
10月2日に、鹿児島県十島村悪石島の南西沖の深さ約10kmで、M5.7の地震が発生し、悪石島で最大震度5強を観測した。発震機構は、北西−南東方向に張力軸を持つ正断層型であった。この地震発生の約15分前にも、同海域でM5.2の地震が発生した。その後10月上旬は悪石島の南西沖で200回を超える地震活動が観測されたが、いずれもM5.7の地震を本震とする余震活動であると考えられた。10月中旬以降は、M4.0前後の地震を2回観測したものの、余震活動は低下した。 補足説明へ
平成12年11月8日 |
地震調査委員会 |
日本及びその周辺域では、マグニチュード(M)4.0以上の地震の発生は約90回(鳥取県西部地震の余震活動を除くと約60回。9月は約40回、昨年末までの30年間の月平均は約40回。)観測された。この内M5.0以上の地震の発生は12回(9月は5回)であった。また、M6.0を超える地震の発生は、1997〜1999年の間で、年に平均11回(台湾付近の地震を除くと8回)発生しているが、今年は10月末までで21回(三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動を除くと16回)発生している。但し、以上の統計には、8月5日にサハリン中部に発生した地震は含めていない。
昨年10月以降本年10月までの主な地震活動として次のものがあった。
−瀬戸内海中部 | 1999年10月30日M4.5(深さ約15km) |
−熊本県熊本地方(深さ約10km)、福井県沖(深さ約15km)及び | |
愛知県西部(深さ約50km)で1999年11月にM4.0を超える地震 | |
−北海道東方沖 | 2000年1月28日M6.8(深さ約60km) |
−北海道胆振支庁(有珠山周辺) | |
2000年3月30日M4.3(深さ約10km以浅)及び4月1日M4.6(深さ約10km以浅)を始めとする火山活動に関連する地震活動 | |
−千葉県北東部 | 2000年6月3日M6.0(深さ約50km) |
−石川県西方沖 | 2000年6月7日M6.1(深さ20km以浅) |
−熊本県熊本地方 | 2000年6月8日M4.8(深さ約10km) |
−三宅島付近から新島神津島付近にかけて | |
2000年7月1日M6.4(深さ約10km)及び7月30日M6.4(深さ約10km)を始めとするマグマ活動に関連する地震活動 | |
−茨城県沖 | 2000年7月21日M6.0(深さ約50km) |
−三宅島付近から新島神津島付近にかけて | 2000年8月には、マグニチュード(M)5.0以上(8月18日、最大M6.0)の地震が合計5回 |
−三宅島付近から新島神津島付近にかけて | 2000年9月11日に利島の西の海域でM5.3 |
北海道地方では、特に補足する事項はない。
東北地方では、特に補足する事項はない。
「三重県中部の深さ約40kmで、M5.5の地震が発生し、・・・。・・・この地震は太平洋側から北西に向かって沈み込むフィリピン海プレートの内部で発生したものと考えられる。・・・。これまでの地震活動は本震−余震型であると考えられ、余震は二日間で約20回観測された。」:
沈み込むプレート内で発生する地震に引き続く余震活動は、内陸の浅いところに発生する地震のものに比べて多くの場合不活発。今回も同様であった。
三重県中部では、今回の震央から北西約20kmのところで、1999年1月から始まり2000年6月以降ほぼ活動が収まった地震活動があった。それと今回の活動とは,発生域の位置及び発震機構が異なり、発生のメカニズムは違っている。
「静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来の低い活動レベルの状態が続いている。」:
静岡県中部のフィリピン海プレート内に発生する地震(M1.5以上)の頻度が、平均して1ヶ月に6回程度であったものが、1999年8月頃からはそれより少ない状態が続いている。
「10月6日に、鳥取県西部の深さ約10kmで、M7.3(暫定)の地震が発生し、鳥取県西部で最大震度6強を観測し、その後、余震活動が続いた。」
この地震の、断層の面積やずれの量を反映したモーメントマグニチュード(Mw)は、6.6(防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、国土地理院)、6.8(気象庁)と推定されている。なお、平成7年(1995年)兵庫県南部地震(M7.2)のMwは6.9(東京大学地震研究所)と推定されている。
九州・沖縄地方では、特に補足する事項はない。
訂正
「2000年9月の地震活動の評価」(10月11日付、地震調査研究推進本部地震調査委員会)の補足説明「1 主な地震活動について」の記述に誤りがありましたので訂正します。
誤 (本文上から4〜6行目)・・・、今年は8月末までで、・・・。
正 (本文上から4〜6行目)・・・、今年は9月末までで、・・・。
参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安 M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3を超えるもの。 参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。 |