平成12年6月14日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2000年5月の地震活動の評価


1 主な地震活動

目立った活動はなかった。 補足説明へ

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

3月末から始まった有珠山の火山活動に関連する地震活動は、4月に入ってからは、低下し、5月に入ってからも低下傾向は続いている。5月14日にマグニチュード(M)3.0の地震があったが、それ以降M3.0を超える地震は発生していない。 補足説明へ

(2) 東北地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(3) 関東・中部地方

○ 5月16日に、鹿島灘の深さ約50kmでM4.6の地震が発生した。この地震は、太平洋プレートの沈み込みに伴うものである。この付近では、1999年3月26日にM4.9、同年4月25日にM5.1の地震がそれぞれ発生している。

○ 静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来、平均的な活動レベルより低い状態が続いている。一方、東海地方のGPS観測の結果には従来の変化傾向から変わるものは見られていない。

○ 昨年1月から地震活動が始まった三重県中部では、本年2月頃から活動がやや活発化し、活動域が北側に拡がり、その状態で継続している。 補足説明へ

(4) 近畿・中国・四国地方

京都府南部から大阪府北部にかけての3ヶ所で相次いで地震活動があった。一つは、5月16日に、京都府と大阪府との境の深さ約15kmでM4.3の地震を最大とするもの、二つ目は、5月20日に、大阪府北部の深さ約15kmでM3.7の地震、もう一つは、5月21日に、京都府と滋賀県との境の深さ約15kmでM3.8の地震を最大とするものであった。いずれの活動も、5月末までには、ほぼ収まった。この地域は、1995年の兵庫県南部地震の後に、全体的に地震活動が活発化している領域に当る。 補足説明へ

(5) 九州・沖縄地方

4月29日頃から始まった大分県中部(別府湾付近)の地震活動は、5月後半にはほぼ収まった。 補足説明へ

3 補足

○ 6月2日に、和歌山県北部の深さ約60kmで、M4.0の地震が発生した。

○ 6月3日に、千葉県北東部の深さ約50kmで、M6.0の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに被害を伴った。

○ 6月5日に、福井県嶺南地方の深さ約10kmで、M4.7の地震が発生した。

○ 6月6日に、奄美大島近海で、M6.1の地震が発生した。

○ 6月7日に、石川県西方沖の深さ約30km以浅で、M6.1の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに被害を伴った。

○ 6月8日に、熊本県熊本地方の深さ約10kmで、M4.8の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに被害を伴った。

○ 6月10日に、東海道沖の深さ約530kmで、M6.5の地震が発生した。

○ 6月13日に、釧路沖の深さ約60kmで、M5.0(暫定)の地震が発生した。

2000年6月3日千葉県北東部の地震の評価

○ 6月3日17時54分頃に千葉県北東部の深さ約50kmでM6.0の地震が発生し、被害を伴った。この地震により、震源地付近で震度5弱を観測した。

○ この地震は、沈み込むフィリピン海プレートと太平洋プレートとの境界付近で発生したものと考えられる。発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、この付近に発生する過去の地震のそれと同様である。その後の地震活動は、本震−余震型で推移し、次第に減衰している。今回の余震活動は、過去に日本及びその周辺で発生した地震の平均に比べるとやや不活発である。

○ 周辺のGPS観測の結果には、この地震の前後で、特に変化は認められない。

○ この地震の震源周辺40km程度の範囲におけるM6クラス以上の地震は、1926年以降についてみると、10年から20年毎に発生しており、その際、比較的短期間で複数回続く傾向がある。前回のM6クラスの地震は1990年6月1日に発生した。

2000年6月7日石川県西方沖の地震の評価

○ 6月7日06時16分頃に石川県西方沖の深さ約30km以浅でM6.1の地震が発生し、被害を伴った。この地震により、震源地から南東約100kmにある小松市で震度5弱を観測した。

○ この地震は、石川・福井県境の北西沖合80km付近のプレート(ユーラシアプレート)の内部で発生したものと考えられる。発震機構は、西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型である。その後の地震活動は、本震−余震型で推移し、次第に減衰している。今回の余震活動は、過去に日本及びその周辺で発生した地震に比べて、活動度と減衰の仕方は平均的であり、余震活動は次第に低下していくと考えられる。

○ 震源周辺の沿岸地域のGPS観測の結果には、特に変化は認められない。

○ この地震の震源周辺50km程度の範囲におけるM6クラス以上の地震の発生は、1926年以降についてはない。

○ この地震は、北東−南西方向に伸びる海底の隆起帯付近で発生したものである。音波探査結果では、この隆起帯に沿って活断層が分布していることが見出されているが、それらは非常に活動的なものであるとは考えにくい。

2000年6月8日熊本県熊本地方の地震の評価

○ 6月8日09時32分頃に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.8の地震が発生し、被害を伴った。この地震により、震源地付近で震度5弱を観測した。

○ この地震は、日奈久(ひなぐ)断層の北部で発生した。発震機構は、北西−南東に張力軸を持つ右横ずれ型である。その後の地震活動は、6月14日現在、本震−余震型で推移し、次第に減衰している。余震の発生域は、日奈久断層の走向に沿って約5kmの長さに分布している。今回の余震活動は、過去に日本及びその周辺で発生した地震の平均に比べると活発であり、マグニチュードが大きな余震の発生割合が高く、今後3日以内にM4.5以上の余震が発生する確率は、20%程度と推定される。このような地震が発生した場合には、震央付近で震度4程度となる可能性がある。

○ 周辺のGPS観測の結果には、特に変化は認められない。

○ 今回の震源付近におけるM4クラス以上の地震の前回の発生は、1999年10月31日のM4.0及び11月10日のM4.1である。それらは、今回の震源の北東約5kmのところに発生した。なお、今回の震源周辺10km程度の範囲におけるM4.5以上の地震の発生は、1926年以降についてみると、1928年のM5.0、1937年のM5.1、及び1970年のM4.5である。


2000年5月の地震活動の評価についての補足説明

平成12年6月14日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

「目立った活動はなかった。」:
日本及びその周辺域では、M4.0以上の地震の発生は44回(4月は50回。昨年末までの30年間の平均は43回。)観測され、内M5.0以上の地震の発生は4回(4月は6回)であり、M4.0以上の地震発生回数からみた今月の活動レベルは平均的な活動レベルである。また、M6.0を超える地震の発生は、1997年から1999年の間で、年に平均約11回程度(台湾付近の地震を除くと8回程度)発生しているが、今年は5月末までで、合計3回発生している。
昨年3月以降の主な地震活動として次のものがあった。これらの地震の活動域及びその周辺域では5月末までで活動の活発化は見られていない。
−新島・神津島近海1999年3月14日M4.7(深さ10km以浅)、
1999年3月28日M5.0(深さ20km以浅)
−釧路支庁中南部1999年5月13日M6.4やや深発地震(深さ約100km)
−和歌山県北部1999年8月21日M5.4(深さ約70km)
−台湾1999年9月21日M7.7(米国地質調査所による。)
−瀬戸内海中部1999年10月30日M4.5(深さ約15km)
−熊本県熊本地方(深さ約10km)、福井県沖(深さ約15km)及び
 愛知県西部(深さ約50km)で1999年11月にM4.0を超える地震
−北海道東方沖2000年1月28日M6.8(深さ約60km)
−北海道胆振支庁(有珠山周辺)
2000年3月30日M4.3(深さ約10km以浅)
及び4月1日M4.6(深さ約10km以浅)を始めとする火山活動に関連する地震活動

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2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

「有珠山の火山活動に関連する地震活動は、4月に入ってからは、低下し、5月に入ってからも低下傾向は続いている。」:
有珠山の火山活動に伴う地震活動は、4月にはM3.0を超えるものは5回、5月には1回(5月14日のM3.0)であった。

この他、北海道地方では、次の地震活動があった。
−5月15日、に宗谷海峡の深さ約10kmでM4.3を最大とする地震活動。

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(2) 東北地方

東北地方では、次の地震活動があった。
− 4月26日、三陸沖に発生したM5クラスの地震とほぼ同じ場所で、5月2日にM4.8の地震が2回発生。また、この地震活動から北西150km付近(1968年十勝沖地震の最大余震とほぼ同じ場所)で、5月24日にM4.5の地震が発生。

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(3) 関東・中部地方

「鹿島灘の深さ約50kmでM4.6の地震」:
茨城県北部及びその沿岸(鹿島灘)には、深さ50〜60kmにおいて、一つのグループをなした地震活動がある。今回の地震はこのグループに属する。5月8日には、このグループの発生域のさらに沖合の深さ約50kmでM4.4の地震が発生した。

「静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来、平均的な活動レベルより低い状態が続いている。」:
静岡県中部のフィリピン海プレートの地震(M1.5以上)の発生頻度が、平均して1ヶ月に6回程度であったものが、1999年8月頃から1ヶ月に2〜4回と平均より少ない状態となり、3月も同様の状態が継続していた。4月に入ってから7回とやや増加したものの、5月には4回、その後6回となり、活動レベルが低い状態が続いている。
(なお、本評価結果は、5月29日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成12年5月29日気象庁地震火山部)
「東海地域においては、地殻内および潜り込むスラブ内において目立つような地震活動はなく全般的に静かな状況が続いています。駿河湾およびその西岸域の地震活動は、最近若干回復の傾向が認められますが、全体としてはなお活動の低い状態が継続していると考えられます。
伊豆半島などの周辺域の地震活動に注目すべき特別な変化は観測されていません。」

「三重県中部では、本年2月頃から活動がやや活発化し、活動域が北側に拡がり、その状態で継続している。」:
2000年2月以降は、月に60〜100回地震の発生が観測されているが、M3.0を超える地震は、3月26日(M3.1)から6月11日(M3.3)まで発生しなかった。

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(4) 近畿・中国・四国地方

「京都府南部から大阪府北部にかけての3ヶ所で相次いで地震活動があった。」:
京都府と大阪府との境で発生した地震の東北東10km付近では、1999年2月〜3月にかけ、M4.0を最大とする地震活動があった。また、京都府と滋賀県との境で発生した地震の北北東約30km付近では、1999年3月にM4.9を最大とする地震活動があった。
1995年の兵庫県南部地震以降、兵庫県南部地震の余震域から琵琶湖周辺にかけて、地震活動が活発化し、現在もその状態で推移している。

この他、近畿・中国・四国地方では、次の地震活動があった。
− 5月4日に伊予灘の深さ約60kmでM4.0の地震。

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(5) 九州・沖縄地方

「大分県中部(別府湾付近)の地震活動は、5月後半にはほぼ収まった。」:
地震活動は、4月29日からの2日間に集中し、5月5日に一時的にやや活発化したものの、5月半ば以降には、M2.1が1回及びM2.0未満が7回観測されたのみとなった。4月29日以降5月末までで、M2.0未満の地震も含めて合計約800回の地震の発生を観測した。

この他、九州・沖縄地方では、次の地震活動があった。
− 5月19日と5月23日に、日向灘の深さ約20kmでM4クラス(ともにM4.4)の地震。
− 5月23日に東シナ海の深さ約220kmでM5.1の地震。

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3 参考1

「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3を超えるもの。

参考2
「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。