パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する

  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. リモートセンシングによる巨大地震津波の広域被害把握技術(越村俊一)

リモートセンシングによる巨大地震津波の広域被害把握技術

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震により発生した大津波は、12都道県で死者・行方不明者18,800人、全壊建物130,429棟(警察庁、2012年6月13日)という被害をもたらし、我が国史上最大規模の超巨大地震津波災害となりました。巨大災害後の災害対応や救援活動において、最も重要なことの一つは被害の全容把握です。2011年東北地方太平洋沖地震津波の被災地は広大であり、激甚な被災地の映像は何度も報道等で映し出されたものの、発災直後に被災地がどれほど拡がっているかの全容を把握することさえ難しい状況でした。私たちはリモートセンシングと空間情報処理技術を活用することにより、この課題を克服しようとしています。津波災害には国境がありません。私たちは、衛星や航空機による被災地の緊急観測の体制を構築し、それを国際社会で共有する仕組みに貢献することを目標としています。
 津波災害を考えた場合、広域被害把握という観点では、津波浸水域をどのようにして把握するかが最初の課題になります。広大な津波浸水域の空間分布を把握するために、JAXA陸域観測技術衛星「だいち」の光学センサ画像(2011年3月14日に撮影)を解析しました。津波の浸水域の抽出には、水の分光特性に着目したNDWI指標という画像フィルターを作成しました。

図1 JAXA陸域観測技術衛星「だいち」の光学センサAVNIR-2による画像(2011年3月14日に撮影)解析により得られた津波の浸水域。
図中の緑点は現地調査による遡上限界点。


 次のステップは、建物被害の把握です。私たちは、国土地理院による直下視・斜め視空中写真を判読して、建物被害と建物構造種別の分布を明らかにしました。写真からの判読なので、特に構造種別の判読精度に限界はありますが、発生直後の緊急観測により直下視・斜め視の空中写真を取得できれば、迅速な被害把握に活用できることを実証しました。また、同じ被災地の観測結果を時系列で解析することにより、復旧・復興状況のモニタリングも可能になります。ここでは、宮城県女川町の瓦礫分布((a)航空写真(2011年3月19日)、(b)衛星画像(2011年6月8日))を示します。浸水域や建物被害だけでなく「瓦礫」に着目した広域被害把握も重要です。瓦礫がもつ分光反射特性に着目して、デジタル航空写真や衛星画像から瓦礫域の分布や瓦礫面積を把握しました。その結果、瓦礫面積は約0.9km2(航空写真;3月19日)と約0.5km2(衛星画像;6月8日)と推定され、被災後約80日間で、約0.4km2の面積差があり、この期間の瓦礫撤去作業が進んでいたことも確認できます。

図2 宮城県女川町の瓦礫分布:(a)航空写真(2011年3月19日)、瓦礫面積は約0.9km2、(b)衛星画像(2011年6月8日)、瓦礫面積は約0.5km2(東北大学大学院工学研究科・福岡巧巳による結果)。

 災害発生後に迅速に被害を把握して、その結果を社会で共有することで、効果的な災害救援活動や復旧活動に資することが私たちの使命であると考えています。

このページの上部へ戻る

スマートフォン版を表示中です。

PC版のウェブサイトを表示する

パソコン版のウェブサイトを表示中です。

スマートフォン版を表示する