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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 強震動評価ができるまで2

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)6月号)

 5月号では地震・地震動の基本知識と地震動予測の基本的な考え方を紹介しました。引き続き今月は、主強震動の計算結果の見方
に詳細法による強震動評価の手順や評価結果の見方を紹介します。

 料理のレシピとは「誰でも同じように美味しい料理を作れる標準的な方法論」ですが、同様の理念を目指し「誰でも同じように強震動の予測計算が出来るような標準的な方法論」としてまとめられたものが強震動予測の「レシピ」です。
 強震動予測の「レシピ」の構成は、次の通りです。
  ① 想定する地震の震源の特性化
  ② 震源と対象地域を含む地下構造のモデル化
  ③ 地震動のシミュレーション手法
  ④ 予測結果の検証
 主要活断層帯や海溝型地震などについて、将来発生する可能性の高い想定地震の断層モデルを設定して高精度で強震動を予測することが可能で、最大加速度、最大速度、最大変位、震度といった単純化された指標だけではなく時刻歴波形も計算されるので、それを用いれば、構造物の地震時挙動や破壊力を知ることや、地震災害軽減策の検討等にも役立てられます。また、最近の新しい地震の発生により得られた多数の高精度な観測記録や震源情報を用いて、レシピは随時見直され、改良されています。

 長期評価結果等に基づいて強震動予測用の震源断層モデルが設定されます。地域の詳細情報が得られている場合には、それを優先して考慮します。不明のパラメータは、全国一律に手順化されたレシピに従って設定されます。
 主な震源断層パラメータを図1に示します。位置・規模を始め震源断層の全体像を記すパラメータを巨視的断層パラメータと呼び、アスペリティなど震源断層の詳細像を記すパラメータを微視的断層パラメータと呼びます。

 強震動予測のために、地震基盤から工学的基盤に至るまでの三次元地盤構造モデルを使います。地震本部のモデルは現時点で最新の知見を総合化した全国モデルですが、調査・観測・研究の進展によって地下構造モデルの信頼性・精度は更に良くなりますので、一層の改良を図っていく必要があります。

 日本全国で統一的に作成された最新の約250mメッシュの微地形区分を表層地盤増幅評価の基礎データとして用いています。微地形区分から表層地盤の層厚30mの平均S 波速度(AVS30)を算出した上で速度増幅率や震度増分を算出する方法には、最新の知見が反映され、揺れやすい地点と揺れにくい地点を知ることが出来ます。

 震源断層、深い地盤構造、浅い地盤構造がモデル化されたら、それらを用いて強震動を計算します。強震動の計算手法にはいろいろなものがあるので、実際には、活用可能な情報の質・量や計算結果の使い方に応じて適切な手法を選ぶことが望ましいと言えます。地震本部では、詳細法と簡便法により、それぞれ図2のような手順で地震動が計算され、「シナリオ地図(震源断層を特定した地震動予測地図)」も作成されています。

 「シナリオ地図」とは、ある特定の地震の破壊シナリオが生じた場合に各地点がどのように揺れるのかを計算してその分布を地図に示したものです。複数の破壊シナリオ(ケース)について比較検討することが出来ます。
 アスペリティの直上や至近、アスペリティの破壊の前面(破壊伝播の延長上)などでは、大きな地震動に見舞われます。また、軟らかい地層が厚く堆積している平野や盆地、表層地盤の悪いところでは、増幅が大きく、大きな地震動に見舞われます。これらの条件が複数重なると、震度6強や震度7の最大級の揺れになる場合もあるので、一層の注意が必要になります。

 5月号からの2回にわたり、強震動評価の概要を紹介しましたが、ここに紹介できたのは、強震動評価に関わる考え方・データ・計算結果のごく一部です。是非、この機会に、地震本部のホームページ(https://www.jishin.go.jp/main/index.html) や防災科学技術研究所の地震ハザードステーションJ-SHIS(https://www.j-shis.bosai.go.jp/)を覗いてみませんか? 日本全国の地震環境や地震ハザードについてもっと詳しく知ることが出来るでしょう。

(広報誌「地震本部ニュース」平成24年(2012年)6月号)

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