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地球科学と津波防災:遠地津波の遅れと初動反転の原因解明

○はじめに

 南米などで発生し太平洋を伝わってくる遠地津波に対する防災対策では、巨大地震の早期把握と正確な津波予測が不可欠です。1960年にチリ南部で発生したM9.5の巨大地震が生み出した津波は、ほぼ1日かけて日本沿岸に到達し、国内で死者139名など、大きな被害をもたらしました。
 2010年2月27日にチリ中部でM8.8の地震が発生し、翌日日本に到来した津波第1波の到達時刻は気象庁発表の到達予測時刻よりも遅く、中には1時間以上遅れた地点がありました。2011年東北地方太平洋沖地震で発生した津波が太平洋を横断したときも同様の津波遅延が南米などで観測され(図1)、地球規模の津波伝播における未知の現象らしいと、遅延原因究明の機運が盛り上がりました。

○遠地津波の遅延と初動反転

 遠地では津波遅延に加え、初動(津波による最初の海面の上下)が最大波高に先行し反転していることを発見しました(図1)。津波遅延や初動反転の原因が津波と固体地球の相互作用によるものと考え、重力変動を伴いながら津波の荷重により海底が弾性変形する新たな津波伝播理論を構築しました。
 修士課程の大学院生とともに2010年チリ地震津波や2011年東北地方太平洋沖地震津波の深海底の津波記録を調べました。測定された速度は、従来の理論と比べて長周期で1−2%程度低下し、新理論が予測した固体地球と相互作用する津波の伝播速度とよく一致しました。固体地球と弾性・重力相互作用する津波波形計算の計算量を劇的に下げる計算手法も開発しました。それは、初動反転を含め、太平洋を横断する津波の波形を驚くべき精度で再現しました。

○これから

 我々が新たに開発した遠地津波シミュレーション技術は、2010年チリ地震や2011年東北地方太平洋沖地震の震源過程を遠地津波記録から求めることを可能にしました。太平洋を横断する津波は、これまで多くの検潮儀に記録され、古くは1906年の南米地震津波の日本での記録や、さらに1854年の安政東海・南海地震津波の米国西海岸での記録までさかのぼります。ところが、従来の津波シミュレーションでは走時や波形が合わないことから、手付かずの状態でした。遠地津波予測技術の向上により、これらの過去の巨大地震を対象とする近代的な地震震源解析が可能となり、震源域の滑り量分布が解明され、繰り返される海溝型巨大地震の履歴の一端が明らかになりつつあります。

綿田 辰吾(わただ・しんご)

東京大学地震研究所・助教(海半球観測研究センター)
カリフォルニア工科大学 Ph.D
防災科学技術研究所を経て現職。専門は大気・海洋・固体地球結合系の波動論。

図1 2011年東北地方太平洋沖で発生した津波が太平洋を伝播する様子
図1 2011年東北地方太平洋沖で発生した津波が太平洋を伝播する様子。 遠地(南米沖合)では津波予測(黄色波形)より遅れて津波(白色波形)が到達し、津波初動も反転していた。

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