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  3. 緊急地震速報の精度向上に向けた気象庁の取組について

緊急地震速報の精度向上に向けた気象庁の取組について

 平成19年10月、気象庁は緊急地震速報の一般提供をはじめました。この一般提供から10年が経ち、当時は想像もしなかったスマートフォンの普及や携帯電話の緊急速報メールなどにより、誰もがいつでも緊急地震速報を容易に受信できる時代になりました。これまで緊急地震速報に接して身の安全を図った事例や、電車の運行を制御した事例も報告されています。
 この10年の間に緊急地震速報は予報を含めて11,343回発表しています。そのうち震度4以上を観測または予測した地震について、その予測震度が震度階級で観測震度の±1階級以内であったものを適切な予測であったとすれば、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(以下、「東北地方太平洋沖地震」という。)後の平成22年度末から平成23年度にかけて一時的に精度が低下したものを除くと、概ね80%の精度で揺れを予測しています。一方、活発な地震活動において、ほぼ同時に発生した複数の地震を1つの地震として処理したために、正しい震源位置及び規模が求められず、過大な震度を予測する事例や、ノイズによる誤報の事例がありました。また、東北地方太平洋沖地震の際には、震源から遠く離れた関東地方でも大きな揺れを観測しましたが、緊急地震速報(警報)が発表されないという課題が見られました。
 気象庁ではこれら明らかになった課題についても改善を図り、緊急地震速報の更なる精度向上を目指しています。今回はその状況について紹介します。

■緊急地震速報の新しい予測手法の開発

 気象庁は、緊急地震速報の更なる精度向上のために、「IPF法(Integrated Particle Filter 法)」及び「PLUM法(Propagation of Local UndampedMotion法・プラム法)」という、2つの新しい予測手法の開発・導入を進めています。 これらの新手法の導入で、ほぼ同時に複数の地震が発生した場合や巨大地震が発生した場合にも、従来手法より精度の良い緊急地震速報が発表できるようになります。 気象庁では、IPF法を平成28年12月に導入し、運用を開始するとともに、PLUM法の導入に向けて開発・検証を進めています。

図-1 緊急地震速報の発表回数と精度

(1)IPF法
~ほぼ同時に複数の地震が発生した場合における精度の向上~

 IPF法は、ほぼ同時に発生した複数の地震を1つの地震として処理したために、正しい震源位置及び規模が求められず、過大な震度を予測するという課題を解決するための新しい震源決定手法です。 1つの地震か否かを判別する際、従来手法では、観測データの時刻情報や揺れの大きさの情報など、種類に応じた解析手法を独立に処理する方法ですが、IPF法では、観測データの各情報を統合的に処理する方法を採用しています。 これにより、複数の地震の発生タイミングが偶然重なったとしても、それらを高い確度で識別できるようになりました。また、従来別々に用いられていたデータや手法を統合的に用いることで、より安定して精度の良い震源を推定できるようになりました。 これにより、たとえ地震の識別が完全にはできなかったとしても、大きく離れた位置に震源を推定してしまうことが少なくなりました。「平成28年(2016年)熊本地震」(以下、「熊本地震」という。) では、最大震度3以下を観測した地震に対して過大な震度を予測し警報を発表する事例が3回ありましたが、いずれの事例もIPF法の導入で改善することが確かめられました。

図-2 IPF 法による改善事例

従来手法は大きく離れた位置に震源を推定したため、過大な震度を予測し警報を発表しました。IPF法は実際の震源に近い位置に震源を推定するため、過大な警報の発表には至りません。

(2)PLUM法の概要
~巨大地震が発生した場合における精度の向上~

 PLUM法は、震源域が百キロメートルを越えるような巨大地震が発生した際でも精度良く震度が求められる新しい予測手法です。従来手法では、推定した震源や地震の規模を元に、任意の地点の震度を求めていました。 一方で、PLUM法では、震源や地震の規模の推定は行わず、予測したい地点の周辺の地震計で観測された揺れの情報(震度に相当する値)から直接その地点の震度を求めます。 これは「予測地点の付近の地震計で大きな揺れが観測されたら、その予測地点も同じように大きく揺れる」という考えに従った予測であり、予測してから揺れがくるまでの時間的猶予は短時間となりますが、広い震源域を持つ巨大地震であっても精度良く震度を予測できます。 東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)にPLUM法を適用すると、震源から離れた関東地方の強い揺れも精度良く予測できることを確認しました。
 PLUM法は、開発及び検証等が完了次第、予測精度と揺れまでの時間的猶予の双方の効果を上げるようにIPF法と組み合わせた形で平成30年3月から運用を開始する予定です。
 なお、この運用開始に伴い、受信装置によっては改修等が必要になる場合があります。詳しくは配信事業者や装置の製造元にご確認ください。

図-3 PLUM 法による改善事例

従来手法は震源域の広がりに対応できなかったために、関東地方の強い揺れが予測できませんでした(図中黒円内)。PLUM法は揺れの広がりそのものから揺れを予測するため、震源から離れた関東地方の強い揺れも予測できます。

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