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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 「審議のまとめ」と防災教育の充実について
中審査スポーツ・青少年分科会学校安全部会「審査のまとめ」と防災教育の充実について

1「審議のまとめ」の趣旨・背景
 東北地方太平洋沖地震をはじめとした地震・津波や毎年 のように発生している台風・集中豪雨等による自然災害、登 下校中の子供が巻き込まれる交通事故、さらには、学校外 における不審者による子供の安全を脅かす事件の発生など、 学校における児童生徒等の安全確保はもとより、児童生徒 等が主体的に安全な行動をとることができるようにするため の安全教育の重要性が再認識されています。国においては、 平成20年の学校保健安全法改正や平成20年及び21年の 学習指導要領等の改訂、平成24年の「学校安全の推進に 関する計画」の閣議決定等、安全管理や安全教育等の充 実が図られてきました。このような中、次期学習指導要領 改訂を見据え、防災教育をはじめとした安全教育が各学校において確実に実施されることが重要であるとの認識の下、 安全教育に関する諸課題について教育課程全体の中で検討 するに当たって必要となる視点について、中央教育審議会 スポーツ・青少年分科会学校安全部会において検討・審議 が行われ、その意見が取りまとめられました。

2「審議のまとめ」の内容
 安全教育の目標及び評価について、「学習指導要領の総 則や解説等における安全教育の目標の明確化と安全教育の 目標と各教科等の目標との関係性等の明示」「安全に対す る意識・態度を評価する指標作り」「学校評価など家庭や地 域を巻き込む形での評価」等の検討が必要とされています。  また、安全教育の内容については、「学習指導要領の総則や解説等において、安全教育の中核となる教科等と各教 科等の役割と関係性を系統的に示すとともに、各教科等に おける安全に関する内容を充実」させることが重要であり、 また、「安全教育が各学校において確実に実施されるため の時間の確保」について検討することについても示されて います。具体的な方策例としては「総合的な学習の時間の 学習活動の例示として安全教育を追記する」ことや「特別 活動の学級活動において防災や防犯に関する安全指導を行 うことを明確に位置付けする」さらに「高等学校段階で検 討される『社会との関わりの中で主体的に生きる力を育成 することをねらいとした新科目』における内容の確保」等 を行っていくことで、「危険予測や回避に係る教育の充実」 「地域や自治体等との合同訓練を含め実践的な訓練等の推 進」「地域の安全活動に進んで参加する一市民として基盤づ くり」等を図る内容とすること等の検討が必要とされていま す。今後、次期学習指導要領改訂に向けた、教育課程全体 の議論等において、引き続き検討されていくことになります。

図1

3 防災教育を進める上で重要な視点
 安全教育の中で特に防災教育、さらに、その中でも自然 災害に関する教育については、災害の直接の原因となる自 然現象について知ることが重要ですが、自然は人間に対し て多くの恩恵を与えていることも併せて指導することが大切 です。例えば、豊富な水量が稲作農業等に欠かせなかったり、 火山活動や地殻変動が優れた景観や温泉などをつくり地域 の活性化に結びついたりもしています。また降雪はスキー などのレジャーやスポーツにも関係しています。自然と人間 との関わりは、体験型学習や問題解決型学習と連動した教 科学習や総合的な学習の時間、修学旅行などの学校行事、 その他の特別活動など、様々な教育活動を通して学ぶこと ができ、実際、地域の自然に根ざした実践的な教育活動が 各地で展開されています。このような機会を利用して、自 然は人間にとっていつも都合よくできているわけではなく、 自然には恩恵と災害の二面性があることを児童生徒等が意 識するようになることが望まれます。
 また、自然災害についての教育は、自然と人間との関係 を考える点で環境教育とも大いに関連しています。さらに、 自然災害による被害は発展途上国で大きくなりやすく、国際 理解教育等とも関連して取り扱うことも考えられます。例え ば、治水・利水等については、日本だけでなく、稲作農業 を中心とする東アジア全体の課題でもあります。また、地震、 津波や火山活動によって生じる災害は、環太平洋の国々に とっても共通の関心事といえます。自然災害や防災を考え るためには、自然科学の知識を社会的文脈や日常生活との 関連から考えた教育の展開も望まれます。  さらに、道徳教育とも関連して、初等中等教育段階で自 然に対する「美しさ」、「感動」さらには「畏れ」を知ることは、 人間の環境へのはたらきかけとともに、自分の生き方を考 えるきっかけになるとも言えます。
 なお、東日本大震災以降、学校における避難訓練では、 児童生徒等が自ら主体的に危険を回避して避難する実践的 な取組が行われるようになってきています。しかし、そもそ も避難訓練は消防法で定められた防火管理者が児童生徒等 を安全に避難誘導するために行う教職員の訓練であり、児 童生徒等が危険を予測できる力や的確に行動できる力を身 に付けることを目指した特別活動等の教育活動とは目的が 異なります。学校においては、教職員が主体となる避難訓 練と児童生徒等の学習として行う防災活動の趣旨や目的を 理解することが必要です。

図2

4 最後に
 防災教育は、様々な教育の視点や各教科等の特質に応じ て、学校の教育活動全体を通じて適切に行うことが望まれ ます。しかし、防災教育と各教科等との相互の関係性、各 教科等における防災に関して重点的に指導すべき事項など が学習指導要領上必ずしも系統的に整理されておらず、防 災教育に係る時間が必ずしも確保されているとはいえない ことが審議のまとめにおいても示されており、今後、次期 学習指導要領改訂に向けた審議の中で検討が行われること となっております。さらに近年の急激な社会情勢の変化に よって児童生徒等を取り巻く安全に関する状況が大きく変化 する中で、安全で安心な社会づくりの基盤となる資質・能力 を児童生徒等に育むことが重要であり、今後とも国、学校 現場、関係機関等が協力して、防災教育の充実を図ってい くことが必要です。

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