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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 減災を介して地域の未来を共創する「減災館」
減災を介して地域の未来を共創する「減災館」

総力を結集し減災を目指すシンクタンク「減災連携研究センター」

 南海トラフ地震の予想被災地では、地域社会の総力を結集して被害軽減を図ることが急務になっています。図は、研究分野、対策手段、社会実装の3つを軸にした減災実現のキュービックです。2012年1月に正式発足した名古屋大学減災連携研究センターは、3つの軸の連携を図り、減災の実現を目指す地域シンクタンクです。
 センター発足直後の3月には、東海地区の6国立大学法人(静岡大、岐阜大、三重大、名工大、豊橋技科大、名大)の防災関連研究センターが連携協力して減災研究を行う「東海圏減災研究コンソーシアム」を設立し、さらに、7 月には、愛知県、名古屋市、経済界、ボランティア団体と協力して人災育成に取り組む「防災・減災カレッジ」を開校しました。その後も、国や地方自治体、各種研究機関、民間企業、市民団体との連携を深めています。
 センターでは、民間企業sの寄付や外部研究資金を活用して、実務経験が豊富な教員を採用すると共に、自治体や民間企業から多くの研究員を受け入れています。現在は約20名の専任教員と、約30名の研究員が所属しており、約30名の兼任教員と国立研究機関などからの7人の客員教員が加わっています。発足後約4年を経て、研究分野間の連携、産官学民の連携、地域内外の研究機関との連携が深化し、災害被害の軽減のため、図に示した総力の結集が実現されつつあります。
 減災連携研究センターでは、災害被害を軽減するための多様な研究、防災人材の育成と意識啓発、防災協働社会のための連携、各種の実践活動を日々、推進しています。防災の担い手を育成する教育・啓発に関しては、多様なメニューを用意しています。夏休みには、小中学生向けの「キッズデイ」や、「高校生防災セミナー」を開催しており、産官学民が協力した「防災・減災カレッジ」や、防災担当職員向けの研修なども行っています。防災・減災カレッジでは、市民向けに加え、防災行政、企業防災、地域の防災リーダー、防災ボランティアコーディネータ育成のコースを用意し、それぞれ3日間の講座を年2回ずつ開設しています。これらの卒業生は、5,000人を超え、地域の防災・減災活動の担い手になっています。年に一度、卒業生が集合し、フォローアップ研修を兼ねて活動成果を共有する交流セミナーを開催しています。
 これに加え、各種のセミナーを対象者別に実施しています。市民向けには講義形式の「防災アカデミー」とサイエンスカフェ方式の「げんさいカフェ」を、大学内の教職員・学生向けには「減災学び舎」を、技術者向けには「ESPER」を、マスメディア向けには「NSL」を、定期開催しています。さらに、減災館の一般公開日には、公開担当責任教員が「ギャラリートーク」を毎日実施しています。また、地域の様々な担い手と防災・減災戦略を考える多様な研究会を開催しています。非公式・非公開の研究会にすることで、本音で議論できる雰囲気ができています。


図

複数の自治体が参加した災害情報伝達訓練

床面投影大型プロジェクターを利用した事前復興計画策定ワークショップ

減災の研究・備え・対応のためのアゴラ「減災館」

 減災館は2014 年3 月に竣工しました。東海地区には基幹的広域防災拠点や防災教育・啓発拠点が未整備だったため、この建物は、防災・減災研究の推進拠点の役割に加え、地域の災害対応拠点や、教育・啓発拠点の役割も担うことにしました。ユニークなショートケーキ型の建物で、防災拠点の役割を果たすため、高性能な基礎免震構造を採用しています。地階の一面は道路に面しており、免震装置を見ながら建築物の耐震・免震・制振技術の歴史を学べる免震ギャラリーになっています。また、1階は体感型学習の場・減災ギャラリーと研究会を開催する減災ホール、2階は調べ学習の場・減災ライブラリーと災害対応を行う災害対策本部室、3~4階は研究プロジェクトスペース、5階は振動実験や対応訓練を行う揺れる実験室になっています。


  • (1) 減災研究の拠点
     減災館は、建物そのものが耐震研究の実験対象で、周期5.2秒の弾性免震建物の屋上に、周期5.2秒、約400トンの免震実験室を乗せたダブル免震構造です。アクチュエータで実験室を共振加力すると、片振幅70cm程度で揺れます。室内には、揺れと同期して映像・音響設備を再現するバーチャルリアリティシステムがあり、地震時の心理実験や対応訓練に使います。これを加力システムとして利用すると、40トンの起振力で約6000トンの建物本体を揺することができます。
     地下の免震層にはジャッキを設置しており、10cm程度の強制変位を与えた自由振動実験ができます。建物と屋上実験室は同じ免震周期なので、共振実験が可能です。建物には、多数の地震計、土圧計、変位計を設置しており、建物の振動挙動や、免震システムの経年変化の解明、振動モニタリング手法の研究開発などに活用しています。
  • (2) 災害対応の拠点
     減災館は、地域及び名古屋大学の災害対応拠点としての機能も備えています。2 階には、24,000人の教職員・学生を守る災害対策本部室があり、災害時には、地震観測情報や、国や自治体の災害情報などを収集して、全学放送設備により情報提供を行います。また、1階は自治体やマスメディアに、3~4階は災害調査を行う研究者に利用いただく予定です。
     災害時の活動を支える様々な設備や備蓄品も備えています。非常用ディーゼル発電機や太陽光発電装置、給水タンク、防災機関と結ぶ衛星通信用パラボラアンテナや長距離無線LANなどを設置し、十分な備蓄もしています。
  • (3) 備えの拠点
     減災館は、様々な展示物や資料に触れながら、自然災害について理解し、身近なところから防災・減災を考えてもらう「学び」や「気付き」の場です。また、研究者、行政、企業、市民といった防災・減災に関わる様々な人が連携する場でもあります。原則、火曜~土曜の午後に1~2階を一般開放しています。開館1年半で2万人ほどの来館者がありました。1階の減災ギャラリーや減災ホールには、防災・減災について学べる多様な展示物があり、様々なセミナーも開催しています。2階には、地域の災害史や防災資料を集めた「減災ライブラリー」があります。
     減災館は、地域博物館・エコミュージアムの役割を担い始めています。減災を通して明るい未来を共創していくこの活動を「減災ルネサンス」と名付け、地域のシンクタンクとアゴラ役を果たしていきたいと考えています。是非、一度、減災館にご来館下さい。


減災連携研究センターホームページ:http://www.gensai.nagoya-u.ac.jp/
減災館紹介ビデオ:https://youtu.be/qcBgt19g4QM

屋上実験室でのDMATの災害対応訓練の様子

複数の自治体が参加した災害情報伝達訓練

床面投影大型プロジェクターを利用した事前復興計画策定ワークショップ

福和 伸夫(ふくわのぶお)

著者の写真

名古屋大学減災連携研究センター、センター長・教授。名古屋大学大学院修了後、民間建設会社の研究室にて耐震研究に従事した後、名古屋大学に異動。建築耐震工学・地震工学の教育・研究に携わる傍ら、地域の防災・減災活動の実践に携わる。近年は、防災・減災を実現する仕組み作りや環境作りに注力すると共に、振動実験教材「ぶるる」の開発や「減災館」の建設を通して社会の防災・減災行動誘発に取り組んでいる。


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