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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 研究成果の社会還元(高木靭生)

 3月11日の東日本大震災には大きな衝撃を受けました。津波が次々と車や建物を呑み込んでいくのを目の当たりにして深刻な思いにとらわれない人はいないでしょう。地震調査研究はこうした被害を人間の知恵で少しでも減らそうと続けられてきましたが、今回ほ
ど私たちの無力さを感じたことはありません。
 むろん、科学といえども一定の限界があることは分かっています。しかし、三陸沖の地震がこれほどの規模になると想定できなかったことは、これまでの地震調査研究の大きな反省点とすべきです。ただ、今回の震災について、別の視点から私がより深刻に受け止めている問題があります。それは、最新の研究成果が何回も警告を発していながら、それが社会に正しく受け止められず、あるいは無視されて深刻な原発事故につながってしまったことです。
 地震調査研究推進本部政策委員会の総合部会は、これまでどうすれば地震調査研究の成果が効果的な減災につなげられるかを議論してきました。その中で、国民の視点で成果を理解してもらえるよう研究側が努力し、成果を普及させることの重要性が指摘されてきました。総合部会が予算要求のヒアリングなどを通じて繰り返し指摘してきたこともあり、その重要性は研究現場にはかなり理解されてきたと思います。
 しかし今回の事故をみると、それだけでは解決できないもっと大きな問題があると感じます。社会的に大きな責任を担う人々の間に科学的成果を真摯に受け止め、迅速に手を打っていく文化や仕組みが欠如、あるいはないがしろにされていたことです。これは今回の
原発事故に限らず、私たちの社会が多かれ少なかれ共通して抱える問題かもしれません。
 研究成果の社会還元とは、最終的には研究で得られた科学的知見を文化や社会の仕組みに的確に反映させ、それらをよりよく変えていくことです。大変難しい課題ですが、地震調査研究の関係者はこうした視点からも、研究成果を、特にそれが安全に関わることな
ら、あらゆるチャネルを通じて国民により強く、より迅速に発信していくことが重要だと思います。

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