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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 目標管理を可能とする組織的な災害対策本部運営のあり方

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)2月号)





 災害時には、避難所対応など平時とは異なる災害対応業務が発生し、道路の復旧作業など通常業務でもその質や量が変化します。地方自治体をはじめとした災害対応に関係する組織は、早期に被災社会の現状と今後に起こりうる状況認識を組織全体で共有し、ある時期までに被災地をどこまで改善するかを示す目標を明確にした災害対策本部運営が可能な環境を整備しなければなりません。そのためには、収集した情報をうまく活用することが必要となりますが、災害の規模が大きくなるほど組織が担うべき情報量が増大するとともに、情報を取り扱うべき担当者が不足するという課題があります。
 本研究では、目標管理を可能とする組織的な災害対策本部運営のあり方を「業務プロセス」、「組織デザイン」、「情報マネージメント」の視点から検討します。
そして、人と防災未来センターで行った図上訓練研修における地方自治体職員の対応をそれぞれの視点から評価し、地方自治体の災害対策本部の検討に必要な項目としてまとめました。



 「業務プロセス」は、ある業務の目的達成に必要な工程とそれらの機能的なつながりを意味します。今回は新潟県中越沖地震での新潟県災害対策本部統括調整部における情報収集から災害対策本部会議資料作成までの対応をもとに作成しました(図1)。各工程の業務内容は表1に示すとおりです。
 「組織デザイン」は、役割分担によって専門性を発揮させる分業と人々の活動を時間的・空間的に整える調整によって各人の活動を連動させるもので、ここでは新潟県中越沖地震当時の新潟県災害対策本部のものを参考にしました。具体的には、情報収集・整理・対応の指示/調整を行う「情報班」、情報分析を実施してから対応を決定する「作戦班」、報道記者を通じて住民へ広報する「広報班」を設定し、全体の活動を調整する役割として「事務局長」を設定しています。
 「情報マネージメント」は、被災地の現状把握と業務での活用を目的とした情報収集、管理、加工、活用の4つの工程からなる一連の流れであると定義します。


 次に図上訓練における地方自治体職員の災害対応を前述した3つの視点から分析しました。本稿における図上訓練は、1県2市の模擬グループによる対応型図上演習であり、同じメンバーで訓練を2回繰り返して実施しました。事前のルール説明では、図上訓練の設定と事前に設計した組織デザインについて説明し、訓練時の業務プロセスおよび情報マネージメントについては、その後の作戦会議で受講者が自発的に検討するようにしました。図上訓練にはインストラクターが災害対策本部長の役割として入り、受講者の対応に課題が発生した場合は事務局長を通じて指導しました。
 図2は、あるグループの1回目の対応における業務フローです。図の上部は業務プロセスを示しており、業務フローの各工程はプロセスの工程に対応しています。また対応時の空間配置を示したものが図3です。
1回目の対応を先述の視点で分析すると、「業務プロセス」ではある時点での目標と対応方針に関連する被災地の状況を書き出す「情報分析」が行われていなかったため、被災地の状況が共有されずに住民への広報対応に苦慮していました。「組織デザイン」では、情報班の業務が情報収集から対応決定、他部署への伝達と多岐にわたったため業務量が過多になる一方で、事務局長が受動的に対応したなど分業と調整がされていませんでした。「情報マネージメント」では、収集された情報を活用できる形式に加工されていないという課題がありました。
 1回目の対応を踏まえて、受講者に下記の改善作業を実施しました。

・「情報分析」の内容を受講者に再度講義
・情報班の業務を分割して、作戦班が情報分析と対応決定の工程を担当
・広報の段取りは、外部評価者の指導内容を担当者間で引き継ぎ
・必要な情報を集約した場所で、状況認識の統一と全体業務の調整の実施
・必要な情報を1か所に集約してわかりやすく表示

 その結果、2回目の対応では、 図4の業務フローや図5の空間配置に示されているように1回目の課題が改善され、目標を明確とした災害対策本部運営が可能になりました。


 図上訓練の対応より明らかになった地方自治体の災害対策本部の検討に必要な項目は下記のとおりになります。

・業務プロセスの各工程(特に「情報分析」「広報」)に関する業務の認識/徹底
・組織デザインを行う際には事前に適切な業務量評価を実施
・業務を分業する際には班の役割と作業の段取りを明確化して班員に徹底
・しかるべき立場の人が業務プロセス全体を認識して活動中に業務の調整
・必要な情報は事前に抽出して現状認識と今後の対応に活用できる形式で加工して1か所に集約して表示

(広報誌「地震本部ニュース」平成23年(2011年)2月号)

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