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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 持続性のある個体地球研究を目指すには(村上亮)



 地震や火山現象の理解をめざす固体地球科学は、自然科学なかでも天然のままの自然に対する観測や観察の占める比重が高いことに著しい特徴がある。地震や噴火は、物理学や化学のように条件をコントロールした精密な再現実験が困難であり、現象発生時に、データを徹底的に収集し、それから最大限の情報を引き出すことが主要なアプローチとなる。自然がもたらす貴重な情報を漏らすことなくキャッチするためには、高性能の観測装置を全国に高密度で配置することが必要である。
 我が国においては、兵庫県南部地震の後、地震計やGPSなどの世界に類をみない空間密度の大規模観測網が整備され、その結果、地震や火山活動現象に関する我々の知識は飛躍的に増大した。
もちろん、それまでの研究の積み重ねによって、発展の準備が整っていた点も重要な要素であるが、近年の急速な研究の進展は、地震など観測の対象とする現象の位置、規模、種類などの計測可能な範囲が従来に比べ格段に拡大したことによってもたらされた側面が極めて強い。固体地球科学の観測への依存度の高さが本質的なものであるとするならば、主として1990年代後半から集中的に構築された観測網から生み出される成果もいずれは限界に達し、次の手を打たないで放置しておけば、研究の進展のスピードが、今後は徐々に鈍化してゆくと予想される。
 単に自然現象の仕組みを理解することを超えて、人類の安全・安心の増大に果たす役割の大きい固体地球科学を今後も持続的に発展させるためには、次世代の観測装置を開発し、それを実際に配備するプロジェクトを立ち上げ、維持・運用に日夜精魂を傾け、良質のデータを中断なく提供する多くの人材の存在が欠かせない。画期的な新しい発見を成し遂げたスター研究者にスポットライトが当たりがちになるのは当然な面もあるが、短時間には成果の出にくい次世代の観測技術の開発研究の価値にも光を当て、それにチャレンジする気概をもった若い研究者の育成に今のうちから力を入れておかないと、高水準の研究が将来にわたって持続できる可能性に、赤信号がともるのではないだろうか。

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