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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究3



 地震調査研究推進本部では、繰り返し発生する海溝型地震の長期評価・強震動評価等の精度向上を目指して、全国の大学等に保存されている過去の地震記録を整理・調査するプロジェクトを平成16〜20年度に実施しました。
過去に発生した地震の記録を整理・保存し、それらの記録を自由に利用できるシステムを構築しましたので、その概要を記します。

 基盤観測網の地震計の観測データは、コンピューターで直接に解析できるような数値データとして保存されており、インターネット経由で利用できるディジタルデータです。ところが、テレメーター地震観測の開始(1970年代)以前は、地震計の記録はそれぞれの観測点で記録装置に記録されていました。
 当時の代表的な記録装置は、大型ドラムに巻き付けた白紙の表面に灯油バーナーのすす(油煙)を付着させ、先端を細くとがらせた針先でひっかいていく方式の「すす書き記録」装置でした。モーターで回転させるドラムは、1回転するとほんの少しだけ横にずれて、針先が同じ場所をひっかくことを防いでいます。通常は、1枚の記録紙は1日分の地震計のゆれを記録しており、毎日定刻に記録紙の交換作業をし
ていました。すす書き記録装置の代わりに、写真用フィルムに地震計の揺れを焼き付ける記録装置を用いた観測点もありました。これらはアナログデータと呼べるでしょう。紙やフィルムは時間の経過とともに品質の劣化が起こりますし、時として記録紙やフィルムが行方不明になることも考えられます。
これらの事故を防ぐために、本プロジェクトでは大型スキャナーとフィルムスキャナーを用いて地震記録を電子ファイル化しました。地震記録の画像ファイルはデータベースで検索することができます。


 宮城県沖では、平均37年の繰り返し間隔でM7.5程度の地震が発生しています。最新の宮城県沖地震は1978年(M7.4)に発生し、3つのアスペリティが同時に破壊したと考えられています。この領域では、1933年(M7.1)、1936年(M7.5)、1937年(M7.1)の3つの地震が続発していました。従来は、1936年の地震が宮城県沖地震と考えられていたのですが、東北大学向山観象所や水沢緯度観測所(現国立天文台水沢センター)のすす書き記録(図1)を用いて余震分布を再検討した結果、3つの地震は互いに重なることなく発生していることがわかりました(図2)。これら3つの地震は宮城県沖の3つのアスペリティの破壊に対応しているとも考えられます。2005年8月16日に発生した宮城県沖地震(M7.2)は、世界中の地震観測波形の研究から、3つのアスペリティのひとつが破壊したものであり、1936年の地震と同じアスペリティの破壊によるものであると考えられます。これらのことから、宮城県沖地震の想定震源域では少なくとも2つのアスペリティが未だ破壊しないで残っていると考えられます。


 水沢緯度観測所のすす書き記録紙を調査した結果、1933年三陸地震(M8.1)の余震の波形には卓越周波数成分に大きな違いが見られました( 図3)。
ここでは、卓越周波数の違いは震源から観測点までの地震波線の経路の違いによるものと考えました。通常は震源距離が大きくなると卓越周波数は小さくなりますが、この地震の余震では水沢観測所に近い余震は低周波数成分に富み、観測所から遠く離れた日本海溝付近の余震は高周波数成分に富んでいました(図4)。太平洋プレート内部の本震の断層面およびその周辺で発生した余震は、減衰の小さい太平洋プレート内部を伝播して観測点まで到達したため高周波成分が卓越したと考えられます。一方、低周波数成分の余震は、本震発生直後に誘発されたプレート境界のすべりによるもので、減衰の大きな陸側プレートの地殻内を伝播してきたと考えられます。つまり、太平洋プレート内部で正断層型のM8.1の本震が発生し、本震の断層面上およびその近傍で高周波の余震が発生しました。
本震の発生により、太平洋プレートと陸側プレートの境界では低周波のプレート間地震が誘発されたと考えられます。
 このようにプレート内大地震とプレート間地震が隣接して続発した事例は、例えば、ラット島(Rat Island:米国アラスカ州アリューシャン列島)の沈み込み帯で1965年2月4日のMw8.7のプレート間地震と同年3月30日のMs7.5のプレート内地震、千島海溝沿いの2006年11月15日のM7.8のプレート間地震と2007年1月13日のM8.2のプレート内地震の組み合わせがあります。
 本研究プロジェクトで得られた過去の地震記録データベースを利用して、過去の地震記録を新しい研究手法で再調査することにより、海溝型地震の研究がおおいに進展することを願っています。

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