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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 日本-トルコ地震ワークショップを開催


 トルコは我国と同様、地震国です。
しかも、両国ともに近未来の大地震発生が危惧されています。わが国では、東海・東南海・南海地震であり、トルコでは、イスタンブール南方のマルマラ海域におけるM7.5程度の地震です。
 我国とトルコの地震研究交流の歴史は長く、表先生、萩原先生、力武先生をはじめとする諸先輩の時代から現在に至るまで、半世紀以上に及びます(トルコ側コンビーナーのProf. Mustafa Erdik の講演でも触れられていました)。
筆者も1981年以来、30年近く共同研究、研究者交流、留学生教育等にあたってきました。
 こうした経緯もあり、我国の文科省とトルコのT U B I T A K ( The Scientific and Technological Research Council of Turkey)との協議の結果、地震をテーマに平成21年11月23、24日の2日間にわたってワークショップが開催されることになりました。我国はJST(科学技術振興機構)がこの事業を担当しました。


 このワークショップの企画は、我国は筆者、トルコはProf. Sedat Inan(TUBITAK)とProf. Mustafa Erdik(Bogazici Univ.) が中心となって進めました。
 日本側の参加者は10名程度と限られていたので、広く公募することは断念し、焦点を絞ることとしました。具体的には、地震調査研究推進本部が策定した次期総合基本施策に沿った内容となるよう工夫しました。また、オールジャパン体制で臨むべく、各担当機関から参加者をお願いしました。最終的には、講演者13名に文科省地震・防災研究課の鈴木課長とJST 事務局からの2名を加え、総数16名となりました。
 トルコ側はホスト国でもあり、参加者数に制限はないので、日本側の内容を参考にしてテーマをいくつか設定し、公募としたようです。ただし、事前の審査を通してこのワークショップでは不適切であると判断されたものは却下し、講演数を28に絞り込んだようです。
 ワークショップ参加者は、双方合わせて約50名でした(写真1)。開始に先立って、トルコ側組織委員会を代表して、Mr. Hassan Ipek(Prime Ministry, Disaster & Emergency Management Directorate)の歓迎スピーチ、日本側からは鈴木課長のスピーチがありました(写真2)。2日間で41講演をこなすため、スケジュールは非常に厳しく、朝9時頃から夕方7時半頃まで延々と続くこととなりました。トルコ側の地震・防災研究の最近の急速な進展がよく理解できた反面、深く議論できないというデメリットもありました。
 日本側の講演は、図1に示すような次期総合基本施策に沿った一連のもの(ただし、筆者の独断による)となるよう工夫しました。また、図2のように、日本側のすべての講演のつながりがわかるようにしました。トルコ側は公募としたこともあって、それぞれの講演内容の相互の関連は明確ではなかったようです。地震本部の下、組織だった調査研究を進めている我国の方式は、トルコ側にとって大いに参考になったのではないかと思っています。現に、トルコにおいても、地震防災関連行政組織が見直されつつあるし、地震観測データの一元化に向けた動きもあると聞いています。




 北アナトリア断層では、東から西に向かって大地震発生が移動していることが知られています。現に、1999年イズミット地震(M7.4)は、予想通り、1967年ムドゥルヌバレー地震の西方延長で発生しました。次の大地震はさらに西方で発生することが予想されています。その震源域はイスタンブール南方域にあたることから、大都市イスタンブールに甚大な被害を及ぼすのではないかと危惧されているところです。各種被害想定でも、イズミット地震をはるかに超える大被害が予想されています。東工大、JAMSTEC(海洋研究開発機構)、京大グループは、想定震源域を含むマルマラ海下の北アナトリア断層の電気抵抗構造を調査すべく、海底MT 観測(地磁気地電流観測)を実施しています(図3)。
 今回のトルコ側の講演のハイライトは、Prof. Mustafa Erdik を中心とするグループのイスタンブールを対象とするEarthquake Rapid ResponseとEarthquake Early Warning(EEW)ではなかったかと私は思いました。後者は我国の気象庁とは異なる手法を考えているようです。また、SAFER (Seismic Early Warning for Europe) と共同でSOSEWIN(Self-Organizing Seismic Early Warning Information Network)をも検討しているようです。
ただし、Prof. Erdik 自身は、想定震源域がイスタンブールに近いことから、EEW は間に合わないであろうと、どちらかといえば悲観的でした。このあたりは、我国との共同研究により、さらなる高度化が期待できるのではないかと思います。


 ワークショップの最終セッションは総合討論にあてられ、今後の共同研究について議論することになっていましたが、過密スケジュールで疲れたせいか、トルコ側参加者が少なく、もっぱらコンビーナーによる問題提起に終始したことは残念でした。
もっとも、このワークショップが今後の2国間共同研究事業へと発展する見込みが明確でなかったことも、盛り上がりに欠けた要因でもあります。
 イスタンブール地震防災は緊急課題であり、我国の協力も大いに期待されていますので、海底諸観測を盛り込んだ地震発生プロセスの研究を中心とする組織的な日本−トルコ共同研究を早急に開始すべきではないかと思います。
この意味で、今回のワークショップの成果に基づいた文科省ーTUBITAK共同研究事業への展開を切に願うものです。TUBITAK 関係者からも同様の意見が私に寄せられており、一刻も早く両者の間で科学技術協力協定が締結されることを望みたいと思います。このような共同研究の成果は、我国の東海・東南海・南海地震防災・減災にも大きく寄与するはずです。

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