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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 緊急地震速報の予測精度向上と提供時間短縮への取り組み


平成19年10月に緊急地震速報の一般向けへの提供を始めてから、約2年が経ちました。緊急地震速報は、コンピューターの自動処理により、地震が発生した直後の少ない観測データを基に、地震の発生場所や規模を推定し、各地で強い揺れが始まる前に、予
測した揺れの強さや到達時刻を伝えることを目的とするものです。気象庁では、緊急地震速報をより有効に利活用していただよう、緊急地震速報の仕組みや限界、利用の心得などを周知・報するとともに、予測精度向上や提供時間短縮に関する様々な取組を行っ
ています。本稿では、平成21年8月から実施した予測精度向上、提供時間短縮への取組を紹介します。

緊急地震速報の技術は大きく分けて二つの柱があります。一つは「素早く地震発生を捉え、発生場所やその規模(マグニチュード)を推定する」、もう一つは「推定した地震の場所・規模から、揺れの程度(震度)や到達時刻を予測する」です。緊急地震速報では、この二つを地震発生を捉えた直後の少ないデータで迅速に行なうことが必要です。近年の情報通信技術の進展やコンピューター性能の向上などの環境が整ったこと、また、少ない観測データで地震の発生場所・規模を推定する新たな手法が開発されたことにより、緊急地震速報は実現しました。緊急地震速報の仕組みの概念を図1に示します。


気象庁では、緊急地震速報の予測精度向上のために、観測点の増強や観測データ処理手法の改良など様々な取組を進めています。取組の一環として、平成21年8月3日から、次の二つの事項を実施しました。
1.新設観測点の緊急地震速報への活用
2.改良したマグニチュード推定式の適用
  これらは、緊急地震速報の技術の一つの柱「素早く地震発生を捉え、発生場所やその規模を推定する」の精度向上を目指したものです。


平成20年に整備した東海・東南海沖のケーブル式海底地震観測システム(東南海OBS ※)の5点及び島しょ部の観測点(「奄美大島西古見」、「八丈島樫立」)の2点の観測データの緊急地震速報への活用を開始しました(図2)。
 これらの新設観測点のデータを活用することにより、新設観測点の周辺で発生した地震に対し、地震を検知するまでの時間が短縮され、緊急地震速報の発表タイミングが早くなります。
 平成16年9月5日19時07分に発生した紀伊半島沖の地震(マグニチュード7.1、最大震度5弱)を例として、東南海OBS を活用した場合に、テレビ・ラジオ等を通じて発表する緊急地震速報(警報)(以下、警報)の発表タイミングが活用しない場合に比べてどの
くらい早くなるかシミュレーションしました。その結果を、図3に示します。
 東南海OBS の観測データを活用すると、より早く地震を検知できるため、緊急地震速報が間に合わない範囲(赤色の円の中)が小さくなり、一方、間に合う範囲では強い揺れが来るまでの猶予時間が長くなります。例えば、震度5弱を観測した和歌山県新宮市では
5.4秒の猶予時間が14.0秒になります。


緊急地震速報におけるマグニチュードの推定は、最初に伝わる地震の波であるP波だけで推定する方法と、次に伝わるS 波も含んだデータで行う方法があります。これはその時に得られているデータに応じて2つの方法を観測点ごとに使い分けて用いています。
 今回、最初に伝わるP波だけで推定する方法を見直し、改良したマグニチュード推定式の適用を開始しました。
これは、旧来の推定式では、規模の大きな地震に対して、実際より小さいマグニチュードを推定してしまう傾向が認められたため、その点を改良したものです。この改良は、気象庁で開催した学識者等からなる緊急地震速報評価・改善検討会及び同会技術部会の検討結果を踏まえたものです。
 この改良式により、P波の段階でのマグニチュード推定がより適正化され、早い段階から大きな地震の規模を的確に把握でき、警報の発表が迅速に行なえます。
 例えば、平成20年7月24日の岩手県沿岸北部の地震(M6.8、最大震度6弱)でシミュレーションした結果を図4に示します。この地震は、地震検知から20.8秒後に警報を発表していますが、改良式を用いた場合、地震検知の4.4秒後に警報を発表することができます。以前のものでは岩手県のほぼ全域で警報が間に合っていません(赤色の円の範囲)でしたが、今回の改良で早い段階でのマグニチュードの推定精度が向上することにより、全ての地域で猶予時間が見込まれます。


緊急地震速報の処理は、気象庁と財団法人鉄道技術総合研究所の共同研究成果をもとに気象庁が開発した処理と、独立行政法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)が中心となって開発した処理を組み合わせています。ここで述べた精度向上の技術は、気象庁が開発した処理に適用しています。2つの処理は別々の観測網のデータを使用しています。具体的には、気象庁の開発した処理では気象庁の観測網のデータを、防災科研の開発した処理では防災科研の高感度地震観測網(以下、Hi-net)のデータを使用しています。平成21年10月に運用を開始した気象庁の新しいシステムでは、両観測網のデータを、双方の処理に適用することが可能です。これにより、気象庁による南西諸島などの島しょ部の観測網とHi-net による内陸の高密度な観測網が組み合わされ、緊急地震速報の精度向上が期待されます。現在、組み合わせた処理の評価を進めています。
 本稿で紹介した取組は、「素早く地震発生を捉え、発生場所やその規模を推定する」技術に関するものです。気象庁では、緊急地震速報がより有効に活用されるように、もう一つの柱「推定した地震の場所・規模から、揺れの程度(震度)や到達時刻を予測する」技術の改良も含め、今後も、緊急地震速報の精度向上に関する様々な取組を行います。

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