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  1. 地震・津波の知識
  2. コラム
  3. 全国地震動予測地図について


 地震調査研究推進本部は、平成17年3月に「全国を概観した地震動予測地図」を公表し、毎年更新してきました。その後も引き続き、地震動予測地図の高度化に向けて、地震動予測手法や地下構造モデルなどの改良の検討を進めてきました。そして今回、これまでの一定の成果をとりまとめて、「全国地震動予測地図」を公表しました。



 日本では、全国どこに住んでいても地震の揺れを経験せずにすむ所はありません。毎日、いたるところで地震は発生しています。2008年は日本全国で、震度1以上を観測する地震が約1900回発生しました(気象庁2008)。では、地震の起こり方、大きな揺れに見舞われる可能性は、全国どこでも同じなのでしょうか。それらを示すため、地震本部では、地震に関する観測・調査・研究結果を取りまとめ、最新の知見を用いて「全国地震動予測地図」を作成しました。
 「全国地震動予測地図」は、ある地点において、ある一定の期間内にどのくらいの強さの揺れに見舞われる可能性があるのかを示した「確率論的地震動予測地図」と、ある特定の地震が発生した時に、ある地点がどのくらいの強さの揺れに見舞われるのかを示した「震源断層を特定した地震動予測地図」という、観点の異なる2種類の地図で構成されています。


 ある地点において、地震により発生する揺れを考えたとき、影響のある地震が1つである地域は少なく、いろいろな震源の地震による揺れに見舞われる可能性があります。例えば、海溝沿いで発生する地震や、活断層で発生する地震、遠くで起きる地震や、すぐ近くで起きる地震など、様々な種類があります。ある地点に影響を与えるこれらすべての地震について、それぞれの地震が発生したときにその地点がどのくらいの強さの揺れに見舞われるかを求め、同時にそれらの地震の発生する確率を考慮して、その地点がある強さ以上の揺れに見舞われる確率を計算します。特に、発生確率の高い地震の震源が近い場所では、強い揺れに見舞われる確率も高くなります。全国のすべ
ての地点においてその確率を計算し、地図上に示したものが、「確率論的地震動予測地図」です。


 地震は断層が動くことによって発生すると考えられています。ある断層である特定の地震が発生した場合に想定される、各地点での強い揺れの分布を示したものが「震源断層を特定した地震動予測地図」です。日本全国には、主要な活断層帯が110あります。これらの活断層で発生する地震については、アスペリティ(断層面上ですべりが大きい主要な破壊領域)の配置や、断層面のずれ方、地震波の伝わり方から、発生する地震動を計算し、各地点の地盤の揺れやすさを基に震度を計算しています。それ以外の断層や、海溝型地震(プレート境界に沿って起こる大地震)については、発生する地震の規模と、距離による地震動の減衰、各地点の地盤の揺れやすさを基に震度を計算しています。


 図2は「確率論的地震動予測地図」の1つである、「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を示した地図です。この図で表示されている色が黄色から赤色になるほど、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率がより高いことを示しており、揺れの確率が26%以上の地点を赤で示してあります。四国から紀伊半島、愛知県から静岡県にかけての太平洋沿岸、伊勢湾の沿岸、関東地方南部、仙台平野、釧路から根室にかけて、特に確率の高い地域があります。これらの地域は、発生頻度の高い海溝型地震の震源域に近く、地盤の特性等から、これらの地震が発生したときに強い揺れに見舞われる可能性が高いことを示しています。また、長野県、新潟県にも揺れの確率の高い地域がありますが、これらの地域は、地震発生確率の高い活断層(糸魚川−静岡構造線断層帯)や、震源は特定されていないものの発生確率が高いとされている佐渡島北方沖の地震の影響を受けています。
 この地図以外にも、何種類かの地図が公表されています。例えば、震度5弱以上の揺れに見舞われる確率を示した地図を見ると、日本全国のほとんどの地域で高い確率になっており、全国どこでも、強い揺れに見舞われる可能性が高いことがわかります。
 また、図3は東京都の部分を拡大した「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の地図です。今回公表した地図は約250m四方のメッシュ単位で計算し図示してありますので、例えば中小河川に沿って揺れの確率が高くなっているなど、自分の住んでいる家の周りの身近な地区での評価結果をきめ細かく読み取ることができるようになりました。



 図4は、立川断層帯において地震が生じた場合に、断層帯周辺がどのように揺れるかを計算して、その分布を示したものです。この例では、中央の星印の点から破壊が開始した場合を計算しています。破壊が開始した点の近くでは、主要な破壊領域があり、強い地震動に見舞われることがわかります。
また、やわらかい地層が厚く堆積している平野では、山地に比べて地震動の増幅の割合が大きく、断層の西側の関東山地に比べ、東側の関東平野では、広い領域で強い揺れに見舞われることがわかります。さらに細かく見ると、河川沿いの低地や東京湾岸の低地では、周りに比べて揺れやすい領域があることもわかります。


 地震本部では、平成17年に「全国を概観した地震動予測地図」を公表し、以降、毎年更新してきましたが、今回は、最新の知見に基づいた手法により地図を作成しました。主な改良点は以下の通りです。
a)約250m四方毎に細分化された地図
 計算の単位を従来の約1km四方から約250m四方に細分化したことにより、従来の地図と比べて、評価結果をよりきめ細かく読み取ることが可能となりました。
b)地表面の分類および地表面での揺れの増幅率の見直し
 地盤の軟らかいところ、硬いところを、より実態に近い条件で評価するために、地表面の地盤(地形)データについて約250m四方で評価を行い、地盤による揺れの増幅率も見直して、再評価を行いました。
c)計算手法の改良
 最近の被害地震で得られたデータ及び知見を踏まえ、断層のモデルから揺れを計算する式を更新し、震源に近い地域の揺れをより適切に評価できるようにしました。
d)震度分布の地図に震度7を明示
 従来、最大級の揺れに見舞われる地域はまとめて「震度6強以上」と示していましたが、a)〜c)を踏まえ、震度分布の地図に震度7も明示するようにしました。
e)主要活断層帯の「震源断層を特定した地震動予測地図」を作成
 全国各地の主要活断層帯で発生する地震について、「震源断層を特定した地震動予測地図」を作成し、主要活断層帯で地震が発生した際の揺れの分布を表示しました。


 今後30年に6弱以上の揺れに見舞われる確率を示した地図を見て、その確率が3%であるとき、それは確率が高いと考えるのでしょうか。それとも、低いと考えるのでしょうか。この数値が3%であると言うことは、平均すれば1000年に1度は、それ以上(震度6弱以上)の揺れに見舞われるということを意味します。このように書くと、一見、その可能性はとても低いように感じられます。では、他の災害や事故
と比べてみましょう。図5にあるように、交通事故で死亡する30年確率は約0.2%、火事で罹災する30年確率は約2%です。これらと比較すると30年3%という数値は、決して低いとはいえないことがわかります。多くの方は、すぐに天気予報の降水確率の数字を思い浮かべて、単純に数字だけを比較して「低い」と感じてしまうかもしれませんが、「今後30年に6弱以上の揺れに見舞われる確率」としては、む
しろ「高い」数字であることに注意する必要があります。


 今回、約250mメッシュで地震動の予測を行ったことで、より身近な地域での確率等の値を読み取ることができるようになりました。防災科学技術研究所では、「全国地震動予測地図」を、よりわかりやすくウェブ上で閲覧することができるシステムとして、これまで運用してきた「地震ハザードステーションJ-SHIS」の大幅な機能アップを実現した新型のシステムを開発しました。新しく開発されたシステムでは、「確率論的地震動予測地図」、「震源断層を特定した地震動予測地図」、それらの計算に用いた表層地盤増幅率や深い地盤構造モデル等を、背景地図と重ね合わせて表示する機能に加え、住所や郵便番号などによる検索機能を強化することにより、調べたい場所での地震ハザード情報を、簡単に閲覧することができるようになりました。
また、より専門的なデータの利活用に資するため、地震動予測地図の地図データや計算に用いた断層モデル、地盤モデル等をダウンロードする機能も強化しました。
 詳しくは防災科学技術研究所「地震ハザードステーションJ-SHIS(http://www.j-shis.bosai.go.jp/)」をご覧ください。




 地震動予測地図はこれまでも、地域住民等の地震防災意識啓発のための基礎資料、重点的な調査観測の対象となる地震や地域の選定の検討材料、国や地方公共団体等の地震防災対策検討のための基礎資料として利用されてきました。今回、近年の調査・観測・研究
の成果として、約250mメッシュという詳細な地図を公表しましたが、今後も、より一層の地震動評価手法と地図の高度化を目指していく必要があります。
また、今回公表した地図には含まれていない、長周期地震動の予測にも取り組んでいく必要があります。さらに、地震動予測地図の普及広報とともに、ニーズを把握して利活用へ橋渡しすることも重要です。「新たな地震調査研究の推進について−地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成21年4月公表)の下、今後も、最新の調査・観測・研究成果に基づいて諸検討を進め、その成果をわかりやすい形で広く提供し、安全・安心な社会の実現に役立てていきます。

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