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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 地震研究の歴史も繰り返す?(纐纈一起)
地震研究の歴史も
くり返す?

 地震に関してメディアの方の相談に乗る機会がしばしばあります。ある相談のとき、いろいろな報道の構想をお聞きしましたが、話が長周期地震動に及びました。長周期地震動となると私の研究に関わることであり、地下構造モデル検討分科会が主に担当している「長周期地震動予測地図」にも深く関わることですから、専門家として相談に乗らざるを得ません。話を聞いていると、どうもすべてが2003年十勝沖地震から始まると思い込んでいらっしゃるようなのが気になりました。
 確かに、この地震による石油タンク火災と、それを報じたテレビ番組によって長周期地震動が改めて呼び起こされ、「長周期地震動」という言葉自体もこの時に初めて定着しました。しかし、日本の専門家の間には、1968年十勝沖地震の八戸での記録をきっかけに、この現象を活発に研究してきた歴史があります。特に、1970年代から1990年代初頭にかけて、グローバル地震学における「長周期」の定義に遠慮して「やや長周期地震動」と呼び、精力的な研究が行われてきました。世界的にも、1985年ミチョアカン地震(メキシコ地震)によるメキシコシティーの長周期地震動をきっかけに、多くの研究者の注目を浴びました(詳しくは2008年に Journal of Seismologyの12巻133-143頁に書いたKoketsu and Miyakeの論文をご覧ください)。
 このように、普通の意味の歴史と同じように地震研究の歴史もくり返すようです。私の研究分野でのもうひとつの例は、常時微動や脈動を利用した地下構造の研究です。これは1950年代から最近まで、昨年亡くなられた金井先生をはじめ日本の応用地震学・地震工学のお家芸でしたが、2000年代に入って地震波干渉法が他分野から導入されたことがきっかけとなって世界的な流行をみています。にもかかわらず日本での過去の研究が、1957年の地震研彙報に載った安芸先生の論文を除くと、省みられることが少ないのは残念なことです。

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