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  1. 地震・津波の提供情報
  2. コラム
  3. 災害リスク情報プラットフォームの開発
 これまで自然災害に対しては、堤防や耐震化などのハード対策から、ハザードマップの作成や配布などのソフト対策まで、様々な対策がとられてきました。しかし、それでも自然災害の「リスク」をゼロにすることはできません。自然災害の発生メカニズムの複雑さに加え、地球規模での環境変化や少子高齢化などの社会構造の変化により、私たち一人ひとりが被りうる自然災害の「リスク」は常に変動しながら存在しています。ここで言う「ハザード」とはモノなどが潜在的に有している固有の危険性で、「リスク」とは「ハザード」への接触(対応)の仕方によって変化する危険度のことです。例えば、活断層はハザードで、それによる地震の発生確率や規模によってリスクの大きさが変わりますし、建物を耐震化すればさらにリスクは低減することになります。

 こうした中、2007年6月1日に長期戦略指針「イノベーション25」が閣議決定されました。「イノベーション25」は、2025年までを視野に入れ、豊かで希望に溢れる日本の未来をどのように実現していくか、そのための研究開発、社会制度の改革、人材の育成等、短期、中長期にわたって取り組むべき政策を示したものです。その技術革新戦略ロードマップの具体的施策である「社会還元加速プロジェクト」の一つとして、「きめ細かい災害情報を国民一人ひとりに届けるとともに、災害対応に役立つ災害情報通信システムの構築」が挙げられました。
 自然災害を被る「リスク」が一人ひとりにある以上、「防災対策」も一人ひとりに必要です。そこで、防災科学技術研究所では、誰もが自らに被りうる自然災害の「リスク」を知り、自らに適した「防災対策」を立案・実行していく社会を目指し、そのための「素材(災害リスク情報)」と「道具・手段(プラットフォーム)」を提供するため、「災害リスク情報プラットフォーム」(図1)の研究開発に着手しました。






 私たちの生活は、地震、津波、噴火、豪雨、地すべり、雪崩などの自然災害の「リスク」と切り離すことができません。そこで、「災害リスク情報プラットフォーム」の開発プロジェクトでは、個人一人ひとりや地域が、それぞれ、自らの防災対策を立案・実行できるよう、地震災害をはじめ各種災害に関するハザード・リスク情報を提供すると同時に、それらを活用して防災対策を立案・実行できる環境を提供することを目的として、これまでに培われた自然災害に関する科学的研究成果や被災経験・教訓などの「知」を最大限に活かし、一人ひとり、そして社会全体の防災力を向上させるためのイノベーションの創出に取り組みます。
 このため、以下の3つの研究開発を実施し、それらを有機的に結びつけることにより、「災害リスク情報プラットフォーム」の構築を目指します。

(1)災害ハザード・リスク評価システムの研究開発
 自然災害に備えるためには、被りうる自然災害のリスクについて知ることが必要です。そのためには、専門的な調査・研究によるリスクの評価・可視化が重要となってきます。そこで、各種自然災害について、これまで培われてきた専門的な知見に基づくハザード評価、リスク評価を行い、その成果を可視化された「災害リスク情報」として提供します。その第一段階として、まずは地震災害を中心に研究開発を行
います。地震の被害を軽減するためには、個々人の地震への意識を高め、地震に対する備えを促すことが不可欠です。このため、日本全国で発生する地震を対象として、個々人が地震リスクを自分の問題としてとらえることができるリアリティーのある詳細なハザードマップやリスク情報を作成します。
こうした情報を集約し、最新の技術を用いて、国民一人ひとりを対象とした、わかりやすく説得力のある情報を提供できる地震ハザード・リスク情報ステーションを構築します。具体的には、地震調査研究推進本部で作成された全国地震動予測地図を高度化するための手法開発や地下構造モデルの構築を行います。それら地震ハザード情報に基づき、全国レベルでの地震リスク評価を実施し、データを公開するためのシステムとして、既に公開中の地震ハザードステーションJ-SHISの機能拡張・高度化を行い、ハザード情報だけでなく、リスク情報も提供可能なシステムとして発展させる予定となっています。
また、地域を限定し、詳細な地震ハザード・リスク評価を実施し、それら情報の利活用に関する実証的な研究にも取り組んでいく予定です。こうして、「新総合基本施策」の基本目標として掲げられた「防災・減災に向けた工学及び社会科学研究を促進するための橋渡し機能の強化」を実現することを目指します。

(2)災害リスク情報活用システムの研究開発
 変動し複雑化する社会においては、誰にも共通する唯一の防災対策を求めるのではなく、自らの状態や価値観、置かれた環境などに合わせて、それに適した防災対策を選択・創造していくことが重要です。そこで、得られる「災害リスク情報」をフルに活用し、個人や地域の特性に合わせた防災対策を立案し、実行できるサービスと手法の開発を行います。その第一段階として、まずは個人一人ひとりと地域コミュニティの防災対策を中心に研究開発を行います(図2)。

(3)災害リスク情報相互運用環境の研究開発
 ハザード・リスクの評価や防災対策の立案、実行を効果的に行うためには、そのために必要な知識や情報がいつでも得られる環境が必要となります。そして、その知識や情報は一カ所にあるのではなく、社会を構成する様々な主体が分散して保持、管理しています。
そこで、その多様な主体が持つ知識や情報、すなわち「災害リスク情報」を相互に利用できるような情報環境の研究開発を行います。



 「災害リスク情報プラットフォーム」を実現するためには、防災科学技術研究所単独の取り組みだけでは不十分です。関係する多くの機関との連携の下、研究に取り組んで行きたいと思います。

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