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  3. 三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価の一部改訂

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)4月号)





 地震調査研究推進本部地震調査委員会は、三陸沖から房総沖にかけての太平洋側で発生する海溝型地震の長期評価として、平成14年7月に「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」を公表しましたが、そのうち茨城県沖で、想定した地震(2008年5月8日の茨城県沖の地震(マグニチュード(M)7.0))が発生したのを受けて、この領域における長期評価の見直しをおこない、3月9日に一部改訂版を公表しました。ここではその概要を紹介します。




 日本海溝沿いに発生する地震は、本州が載っている陸のプレートの下へ太平洋側から太平洋プレートが沈み込むことで、プレートに歪みがたまり、これら2つのプレート面の境界面がすべる(プレート間地震)ことや、太平洋プレートの内部で破壊が発生する(プレート内地震)ことによって発生します。
 日本海溝沿いについては、過去に発生した主な地震の発生領域等から図1のように複数の領域に分けて長期評価を行っています。この中では、大きな規模の地震発生の過去の履歴が比較的よく分かっており、同程度の規模の地震が繰り返し同じような場所で発生し、今後もそのような地震が発生すると考えられる領域と、大きな規模の地震発生は知られているものの、地震の発生が単発、あるいは、同じ場所で地震が発生しているかどうかが不明であったりして、その発生の繰り返しと発生場所がよく分からないという領域があります。
 茨城県沖では、過去60年程度の間にM7程度の規模の地震が数回発生していますが、同じ場所で発生しているかどうかよく分かりませんでした。しかし、2008年5月の地震を解析した結果、過去の地震と同じ場所で発生したことが分かりましたので、繰り返し同じ場所で地震が発生するという考え方で評価を見直しました。


 今回の評価では、2008年5月8日の茨城県沖の地震(M7.0)の発生を受けて、茨城県沖でこれまでに発生した主な地震を再検討しました。その結果、茨城県沖では、M7前後の規模のプレート間地震が同じ場所で20年程度の間隔で繰り返し発生してきたことが分かりました。そして、それらの地震を茨城県沖における一連の地震として扱うこととしました。
 茨城県沖については、これまで死者をもたらした地震は知られていませんが、M7前後の規模の地震としては、1923年以降では、1923年、1924年、1935年、1938年、1943年、1961年、1965年、1982年、2008年にプレート間地震が発生しています(図2)。
 2008年の地震については、本震及び本震の約40分前に発生した前震について解析され、前震で東側の領域で破壊が生じ、本震で西側の領域で大きな破壊が生じたと考えられています。
同様な解析で、1982年の地震については、2008年の地震と同じような場所が同時に破壊されたことが分かっています。1961年及び1965年の地震についても、この領域における、それぞれ東側、西側での破壊であったと考えられています。これらのことから、ここでは、東側と西側で大きく破壊が生じる領域があり、同時あるいはある程度の時間間隔をもって、時空間的にまとまって繰り返し破壊されていると考えられます。それ以前の地震についても、同様な考え方で、1923年、1924年をひとまとまりの地震として一連の地震とし、1943年の地震も一連の地震としました。
 また、地震発生間隔等の算出には含めませんでしたが、1896年にはM7.3の地震が発生しています。震央の位置及び地震規模の精度は現在よりも劣るものの、震源域は茨城県沖であること及び地震の発生間隔の上でも矛盾がないとして、一連の地震と推定しました。
 1935年及び1938年の地震は、一連の地震に比べて、震央が北側にあることなどから、一連の地震とは別の地震としました。
 以上のことから、茨城県沖で発生する一連の地震の想定震源域は、図2に示す領域としました。想定震源域は、精度の良い解析結果が得られている1982年及び2008年の地震のすべり量分布や震源位置等を参考にして判断しました。


 三陸沖から房総沖における地震の発生確率等を表1に示しました。この表の中で、三陸沖北部のプレート間地震、三陸沖南部海溝寄り及び宮城県沖地震は、ほぼ同じような規模の地震がほぼ同じ場所で繰り返し発生していると考えられています。また、三陸沖北部から房総沖の海溝よりのプレート間大地震、三陸沖北部から房総沖の海溝よりのプレート内大地震、また、三陸北部の一回り小さい地震や福島県沖の地震は、発生の繰り返しや発生場所がよく分からないものとして評価されています。なお、宮城県沖の地震につきましては、三陸沖から房総沖にかけての地震活動とは別に評価を行っており、平成12年11月に「宮城県沖の地震の長期評価」として公表しています。

(広報誌「地震本部ニュース」平成21年(2009年)4月号)

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