平成10年6月10日 |
地震調査研究推進本部 |
地震調査委員会 |
1998年5月の地震活動について
4月20日から始まった伊豆半島東方沖の群発地震は、5月3日に最大のマグニチュード(M)5.7の地震が発生した後、5月中旬以降、活動度が低下した。5月4日に石垣島南方沖でM7.6の地震が発生し、沖縄県内で小さな津波を観測した。5月31日に三陸沖でM6.3の地震が発生した。
○ 5月12日に十勝支庁南部の深さ約60kmでM4.2の地震が発生した。4月20日にもほぼ同じところでM4.2の地震が発生した。
○ 5月13日に択捉島の東方沖でM5.4の地震が発生した。
○ 5月14日に十勝支庁中部の深さ約70kmでM4.0の地震が発生した。
○ 5月15日に三陸沖でM5.8の地震が発生した。この地震の約8時間前にほぼ同じところでM5.2の地震が発生した。これらの地震の発震機構は北西−南東に圧縮軸をもつ低角逆断層型で、1994年三陸はるか沖地震(M7.5)の余震と考えられる。
○ 5月21日に宮城県沖の深さ約80kmでM5.0の地震が発生した。この地震は、沈み込む太平洋プレートの二重深発地震面の下面で発生したものである。
○ 5月31日に三陸沖でM6.3の地震が発生した。震源は、1989年(M7.1)、1992年(M6.9)の三陸沖の地震の余震域の南東の端にあたる。この地震の発震機構は北西−南東に圧縮軸をもつ低角逆断層型である。
○ 4月20日から始まった伊豆半島東方沖の群発地震は、5月中旬以降、活動度が低下し、4月20日以前の活動状態にもどった。
主たる震源域は、川奈崎の北東沖合いの東西8km×南北3km(深さ2〜9km)であり、1997年3月の活動域の南側である。最大は5月3日に発生したM5.7の地震で、その発震機構は南東−北西圧縮の横ずれ断層型であった。この群発地震活動に伴い周辺の歪計、傾斜計、GPS観測値及び地下水位等に変化が観測された。
5月31日までの地震回数は約11000回、有感地震回数は211回、歪の変化量は約1.0×10−6、GPS観測値の変化は初島−小室山間で約9cmであった。
今回の地震活動は、地震回数・活動の期間・地殻変動等の状況から考えると、1997年3月の活動と同様に、過去繰り返されてきた活動の中でも活発な活動のひとつであった。活動の特徴は、間欠的な活動を示した点や、最大地震の発生時期が遅かった点である。
○ 5月8日に鳥島近海の深さ約40kmでM5.6の地震が発生した。
○ 5月16日に千葉県南部の深さ約75kmでM4.8の地震が発生した。
○ 5月17日に三重・岐阜県境付近の深さ約12kmでM3.8の地震が発生した。この地震は、4月22日に養老断層系に発生したM5.4の地震の余震であり、この地域の余震活動は低下してきている。
○ 5月19日に関東東方沖の深さ約50kmでM5.2の地震が発生した。
○ 東海地方のGPS観測の結果には特段の変化は見られない。
○ 5月23日に周防灘の深さ約85kmでM5.3の地震が発生した。また、5月28日に愛媛県西部の深さ約50kmでM4.0の地震が発生した。これらの地震は沈み込むフィリピン海プレート内の地震である。
○ 5月24日に鹿児島県西方沖の深さ約10kmでM4.1の地震が発生した。この地域は、鹿児島県北西部の1997年3月26日の地震(M6.5)の東西に延びた余震域のさらに西方にあたる。
○ 5月4日に石垣島南方沖でM7.6の地震が発生した。この地震により沖縄県内で観測された津波の最大の高さは10cm程度である。震源は南西諸島海溝の南側のフィリピン海プレート内で、その発震機構は東西方向に圧縮軸をもつ横ずれ断層型である。余震分布から断層面の走向は北西−南東方向と推定される。この地震で発生した津波が地震の規模に比べて小さかったのは、発震機構が横ずれ断層型で、海底における地殻変動の上下成分が小さかったためと考えられる。
○ 5月5日に沖縄県読谷村付近の深さ約15kmでM4.2の地震が発生した。ほぼ同じところで、1997年11月にM3.9を最大とする活動が約1ヶ月間続いた。
○ 6月1日に紀伊半島の深さ約410kmでM6.0の地震が発生した。