平成10年8月14日 |
地震調査研究推進本部 |
地震調査委員会 |
1998年8月の長野県中部(上高地付近)の地震活動
8月7日14時頃から、長野県中部(上高地付近)で群発地震活動が始まり、活動は消長を繰り返しながら現在も続いている。
主な活動は、上高地付近の東西5km(焼岳の東3〜8km)、南北3km、深さ約5km程度に分布している。活動開始以降震源の位置に大きな変化は見られない。今回の活動は、マグニチュード(M)4程度以上の地震が発生するたびに地震の数が増える状況を繰り返している。これまでの最大地震は、8月12日に発生したM4.7で、この地震をはじめ多くの地震の発震機構は、北西−南東方向に圧縮軸をもつ横ずれ型である。これはこの地域および周辺で発生した過去の地震の発震機構と同様である。8月12日夕方から、北側に約5km離れたところ(穂高岳のすぐ西側)で地震が発生し、14日午後にはM4.0の地震が発生した。
周辺のGPS観測値には、地震活動に伴う変化は認められない。
この地域では、1969年と1990年に群発地震活動が発生している。1969年の活動は、今回の活動域とほぼ同じところで発生し、8月31日から9月下旬まで続いた。最大は9月2日のM5.0の地震で、M4.0以上の地震4個を含む群発地震活動であった。1990年の活動は、今回の活動域の東側で発生し、4月1日から5月上旬まで続く群発地震活動で、4月1日のM4.4の地震が最大であった。
この地域の周辺では、1990年には、南西に約25km離れた岐阜・長野県境付近(乗鞍岳南麓)で1月の下旬にM4.3を最大とする地震活動が、また、2月中旬から3月中旬にかけては、北に約30km離れた富山・長野県境(烏帽子岳付近)のM4.9を最大とする地震活動があった。さらに、1993年の7月から12月には、北に約15km離れた富山・長野県境(槍ヶ岳付近)でM5.0を最大とする活動などがある。
以上のような過去の地震活動の例からみて、今回の活動は始まって1週間しか経過してないことから、今後も消長を繰り返しながら数週間程度継続するものと考えられる。この間起こりうる地震の規模は、現在までの最大のM4.7を超える可能性があるものの、M5を大きく超える可能性は少ないと考えられる。なお、震源の位置が浅いことから、局所的には大きい震度になることもある。また、北側に離れたところでも地震が発生していることから、1990年のように場所を変えながら活動する可能性もある。