平成9年4月9日 |
地震調査研究推進本部 |
地震調査委員会 |
1997年3月の地震活動について
3月3日から伊豆半島東方沖で活発な群発地震活動(最大M5.7)があったほか、3月16日に愛知県東部でM5.8、3月26日に鹿児島県北西部でM6 .3の地震があり、それぞれ被害を伴った。
○3月17日に浦河沖の深さ65kmでM4.6の地震があった。
○1983年の日本海中部地震(M7.7)の余震域で、3月6日にM4.9の地震があった。
3月3日から伊豆半島東方沖で群発地震活動が始まった。活動は1週間程度活発に続いたが、中旬以降は散発的になり、今回の活動はほぼ終息したと考えら れる。
主な活動域は、川奈崎の北東沖合い約2kmを中心とする東西5km(深さ2〜8km)であり、昨年10月の活動域の東に隣接し、1995年9〜10月の主な活動域の北東に当たる。また、6日には、この活動域から南に約10km離れた城ヶ崎海岸沖合い(深さ2〜6km)にも小規模な活動があった。最大地震は4日12時51分のM5.7であった。また、3日23時09分の地震(M5 .0)をはじめ、震度5弱を観測した地震が3回あった。4日〜6日には微小な低周波地震が観測された。
この群発地震活動に伴い、周辺の歪計、傾斜計、GPS及び地下水位の観測値に変化があった。その変化は、次第に鈍化し、中旬には群発地震活動開始以前の傾向に戻った。また、伊豆半島東岸沿いの水準測量の結果から伊東市周辺で約2.5cmの隆起が観測された。これらの地殻変動の状況は、今回の群発地震の活動域で地殻が膨張したことを示しており、過去繰り返されてきた活動と同様の現象と考えられる。
地震回数、活発な活動の期間、地殻変動等の状況から考えて、今回の活動は1995年の活動よりやや大きく、過去繰り返されてきた活動の中でも活発なものの一つであったと考えられる。
○3月16日に愛知県東部の深さ39kmでM5.8の被害地震が発生し、豊橋市で震度5強を観測した。この地震は、震源の深さから、沈み込んだフィリピン海プレート内の地震であると考えられる。発震機構は、張力方向が北東−南西の正断層型である。今回の地震に伴う余震は、本震直後に多発したが、その後順調に減少し、下旬にはほぼ収まった。最大の余震は、本震2分後のM4.3であった。
周辺のGPSの観測結果には、地震に伴う変化は認められなかった。また、周辺の体積歪計等に地震に伴う変化が観測され、その変化は発震機構とおおむね調和的であった。
なお、今回の地震の南東約15kmの浜名湖北岸の深さ40kmでは、1983年3月にM5.7の被害地震が発生している。
○3月23日に茨城県南部の深さ72kmでM5.0の地震があった。この地震の発震機構は低角逆断層型であり、このことと震源の深さから、今
回の地震は 沈み込む太平洋プレートとフィリピン海プレートとの境界の地震であると考えら れる。
○駿河湾周辺では先月に引き続きM3.0以上の地震はなかった。東海地方のGPS観測の結果には特段の変化は見られない。
特に目立った活動はなかった。
○3月26日に鹿児島県北西部でM6.3の被害地震があり、川内市、阿久根市及び宮之城町で震度5強を観測した。この地震は深さ8kmの陸域の浅いところで発生した地震である。今回の地震活動は、本震−余震型の推移をたどり、余 震活動はおおむね順調に減衰している。最大の余震は現在までのところ4月3日のM5.5(暫定)である(補足参照)。余震は、東西方向に長さ約15kmにわたって分布している。このことと発震機構から今回の地震は、東西方向の左横ずれの断層運動による地震であると考えられる。
周辺のGPS観測結果には、今回の地震に伴い、左横ずれの断層運動と調和的な若干の変化が見られた。
今回の地震の北東約20kmでは、1994年2月に今回の地震とほぼ同じ発震機構のM5.7の地震が発生している。
○3月14日に石垣島の北方沖の深さ約170kmでM5.2の地震があった。
(4月1日〜9日の主な地震活動)
○4月1日に愛媛県西部の深さ約50kmでM4.7の地震があり、3日にもほぼ同じところでM4.9の地震があった。これらは、震源の深さから沈み込むフィリピン海プレート上面付近の地震であると考えられる。
○4月3日に鹿児島県北西部でM5.5(暫定)の被害地震があり、川内市で震度5強を観測した。この地震は、3月26日の鹿児島県北西部の地震(M6. 3)の余震であり、発生位置は3月の地震の余震域の西部である。発震機構は本震とほぼ同じである。
周辺のGPS観測結果によると、この余震に伴い若干の変化が見られた。 また、4月5日にも3月の地震の余震域の東部でM4.9(暫定)の余震があった 。3日及び5日の余震に伴う余震域の拡大は見られなかった。
これらの余震の発生に伴って余震回数は一時増加したものの、余震活動の低下傾向に大きな変化はなかった。