平成23年10月7日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2011年9月の地震活動の評価

1.主な地震活動

○ 9月7日に日高地方中部〔浦河沖〕でマグニチュード(M)5.1の地震が発生した。この地震により北海道で最大震度5強を観測し、被害を生じた。

○ 9月21日に茨城県北部でM5.2の地震が発生し、茨城県で最大震度5弱を観測した。

○ 9月29日に福島県浜通り〔福島県沖〕でM5.4の地震が発生し、福島県で最大震度5強を観測した。

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

○ 9月7日22時29分に日高地方中部〔浦河沖〕の深さ約10kmでM5.1の地震が発生した。この地震の発震機構は北東−南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。また、同日07時27分にM4.3の地震が発生するなどのまとまった地震活動があった。

○ 9月13日に日高地方西部の深さ約100kmでM4.5の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した地震である。

○ 9月18日に浦河沖の深さ約65kmでM5.0の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。

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(2)東北地方

○ 9月17日04時26分に岩手県沖でM6.6の地震が発生した。この地震の発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震である。同日06時08分にM6.1の地震が発生し、17日から18日にかけてM5.0以上の地震が10回発生するなどのまとまった地震活動があった。GPS観測結果によると、この地震に伴い、ごくわずかな地殻変動が観測されている。

○ 9月26日に福島県会津の深さ約10kmでM4.2の地震が発生した。この地震の発震機構は南北方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 9月29日に福島県浜通り〔福島県沖〕の深さ約10kmでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。GPS観測結果によると、この地震に伴い、震央付近で小さな地殻変動が観測されている。

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(3)関東・中部地方

○ 9月4日に埼玉県南部の深さ約90kmでM4.7の地震が発生した。この地震は太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界付近で発生した地震である。発震機構は東北東−西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。

○ 9月21日に茨城県北部の深さ約10kmでM5.2の地震が発生した。この地震の発震機構は東北東−西南西方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。

○ 東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。

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(4)近畿・中国・四国地方

目立った活動はなかった。

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(5)九州・沖縄地方

目立った活動はなかった。

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補足

○ 10月5日18時59分に富山県東部〔長野県北部〕のごく浅いところでM5.4の地震が発生した。この地震の発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した地震である。また、同日19時06分にもM5.2の地震が発生した。GPS観測結果によると、この地震に伴い、震央付近で小さな地殻変動が観測されている。

○ 10月5日に熊本県熊本地方の深さ約10kmでM4.5の地震が発生した。この地震の発震機構は、南北方向に張力軸を持つ正断層型で、地殻内で発生した地震である。


注:〔 〕内は気象庁が情報発表で用いた震央地域名である。


2011年9月の地震活動の評価についての補足説明

平成23年10月7日
地震調査委員会

1.主な地震活動について

2011年9月の日本およびその周辺域におけるマグニチュード(M)別の地震の発生状況は以下のとおり。
  M4.0以上およびM5.0以上の地震の発生は、それぞれ191回(8月は239回)および23回(8月は23回)であった。また、M6.0以上の地震の発生は3回で、2011年は9月までに111回発生している。

(参考) M4.0以上の月回数73回(1998−2007年の10年間の中央値)、
M5.0以上の月回数9回(1973−2007年の35年間の中央値)、
M6.0以上の月回数1.4回、年回数約17回(1924−2007年の84年間の平均値)

2010年9月以降2011年8月末までの間、主な地震活動として評価文に取り上げたものは次のものがあった。

− 新潟県上越地方  2010年10月3日 M4.7(深さ約20km)
− 宮古島近海  2010年10月4日 M6.4
− 父島近海  2010年12月22日 M7.8
− 三陸沖  2011年3月9日 M7.3
− 東北地方太平洋沖地震  2011年3月11日 M9.0(深さ約25km)
− 静岡県伊豆地方  2011年3月11日 M4.6(深さ約5km)
− 長野県・新潟県県境付近  2011年3月12日 M6.7(深さ約10km)
− 静岡県東部  2011年3月15日 M6.4(深さ約15km)
− 茨城県北部  2011年3月19日 M6.1(深さ約5km)
− 福島県浜通り  2011年3月23日 M6.0(深さ約10km)
− 茨城県南部  2011年3月24日 M4.8(深さ約50km)
− 秋田県内陸北部  2011年4月1日 M5.0(深さ約10km)
− 茨城県南部  2011年4月2日 M5.0(深さ約55km)
− 宮城県沖  2011年4月7日 M7.1(深さ約65km)
− 福島県浜通り  2011年4月11日 M7.0(深さ約5km)
− 長野県北部  2011年4月12日 M5.6(深さごく浅い)
− 千葉県東方沖  2011年4月12日 M6.4(深さ約25km)
− 茨城県南部  2011年4月16日 M5.9(深さ約80km)
− 長野県・新潟県県境付近  2011年4月17日 M4.9(深さ約10km)
− 秋田県内陸南部  2011年4月19日 M4.9(深さ約5km)
− 千葉県東方沖  2011年4月21日 M6.0(深さ約45km)
− 福島県浜通り  2011年5月6日 M5.2(深さ約5km)
− 新潟県中越地方  2011年6月2日 M4.7(深さ約5km)
− 岩手県沖  2011年6月23日 M6.9(深さ約35km)
− 長野県中部  2011年6月30日 M5.4(深さ約5km)
− 和歌山県北部  2011年7月5日 M5.5(深さ約5km)
− 三陸沖  2011年7月10日 M7.3
− 茨城県南部  2011年7月15日 M5.4(深さ約65km)
− 駿河湾  2011年8月1日 M6.2(深さ約25km)
− 福島県沖  2011年8月19日 M6.5(深さ約50km)

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2.各地方別の地震活動

(1)北海道地方

北海道地方では特に補足する事項はない。

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(2)東北地方

「9月26日に福島県会津の深さ約10kmでM4.2の地震が発生した。(以下、略)」:
 福島県会津では、3月中旬からまとまった地震活動が続いている。

−福島県浜通りから茨城県北部の領域にかけて、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の発生後から活発な地震活動が続いている。

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(3)東北地方太平洋沖地震に伴う地震活動及び地殻変動について

−3月11日に発生した平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余震域では、活発な地震活動が見られる。今後も引き続き規模の大きな余震が発生する恐れがあり、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性がある。また、引き続き東北地方から関東・中部地方の広い範囲で、余効変動と考えられる東向きの地殻変動が観測されているが、徐々に小さくなってきている。

(4)関東・中部地方

「東海地方のGPS観測結果等には、東海地震に直ちに結びつくとみられる変化は観測されていない。」:
 (なお、これは、9月26日に開催された定例の地震防災対策強化地域判定会における見解(参考参照)と同様である。)

(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成23年9月26日気象庁地震火山部)

「現在のところ、東海地震に直ちに結びつくような変化は観測されていません。

1.地震活動の状況
 8月1日に駿河湾で発生したM6.2の地震の、余震の回数は次第に減少しています。
 静岡県中西部の地殻内では、全体的にみて、2005年中頃からやや活発な状態が続いています。
 浜名湖周辺のフィリピン海プレート内では、引き続き地震の発生頻度のやや少ない状態が続いています。
 その他の領域では概ね平常レベルです。

2.地殻変動の状況
 全般的に注目すべき特別な変化は観測されていません。
 GPS観測及び水準測量の結果では、御前崎の長期的な沈降傾向は継続しています。更に、傾斜計、ひずみ計等の観測結果を含めて総合的に判断すると、東海地震の想定震源域及びその周辺におけるフィリピン海プレートと陸のプレートとの固着状態の特段の変化を示すようなデータは、現在のところ得られていません。
 なお、GPS観測の結果によると、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による余効変動が東海地域においてもみられています。」

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(5)近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では特に補足する事項はない。

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(6)九州・沖縄地方

九州・沖縄地方では特に補足する事項はない。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
 @M6.0以上または最大震度が4以上のもの。A内陸M4.5以上かつ最大震度が3以上のもの。B海域M5.0以上かつ最大震度が3以上のもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
 1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
 2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
 3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。