平成12年8月9日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会

2000年7月の地震活動の評価


1 主な地震活動

6月26日夜から三宅島の火山活動に伴って始まった三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動は、活発な活動域を変えつつ、消長を繰り返しながら継続している。一連の地震活動の中には、マグニチュード(M)6.0を超える地震を4回含み、いずれも最大震度6弱を観測した。また、一連の地震活動によって死傷者を含む被害が発生している。

7月21日に、茨城県沖の深さ約50kmでM6.0の地震が発生し、最大震度5弱を観測するとともに、被害を伴った。 補足説明へ

2 各地方別の地震活動


(1) 北海道地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(2) 東北地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ

(3) 関東・中部地方

○ 7月21日に、茨城県沖の深さ約50kmでM6.0の地震が発生し、最大震度5弱を観測し、被害を伴った。この地震については、7月21日の評価結果と変わらない。

この地震は、陸のプレートと沈み込む太平洋プレートとの境界付近で発生したものと考えられる。発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、この付近に発生した過去の地震のそれと同様であった。周辺のGPS観測には、この地震の前後で、特に変化は認められなかった。その後の余震発生頻度は減少してきている。

○ 6月末から始まった、三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動は、活動域を移動させながら継続している。また、GPSによる観測結果でも、地殻変動が継続している。

地震活動が活発な領域は、三宅島西方沖から新島・神津島東方沖の海域、利島西方沖から神津島付近の海域、及び三宅島南西沖から御蔵島南西沖の海域の3つとなっている。7月には、M6.0以上の地震が1日、9日、15日、及び30日にそれぞれ発生(計4回)し、いずれも最大震度6弱を観測した。この他、最大震度5強を5回、5弱を7回観測した。(別項参照)。

○ 静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来の低い活動レベルの状態が続いている。一方、東海地方のGPS観測及び水準測量の結果には従来の変化傾向から変わるものは見られていない。 補足説明へ

(4) 近畿・中国・四国地方

○ 7月17日に、鳥取県西部の深さ約15kmで、M4.3の地震が発生した。地震活動は減衰している。この付近では、1997年9月4日にM5.1を最大とする地震活動があった。

○ 7月23日に、徳島県南部の深さ約10kmで、M4.0の地震が発生した。地震活動は減衰している。この付近では、1955年7月27日にM6.4を最大とする地震活動があった。 補足説明へ

(5) 九州・沖縄地方

目立った活動はなかった。 補足説明へ


3 補足

○ 8月3日に種子島近海(大隈半島南東沖)の深さ約40kmで、M5.1の地震が発生した。

○ 8月5日にサハリン中部で、M7.0の地震が発生した。

○ 8月6日に鳥島近海の深さ約430kmで、M7.3の深発地震が発生した。


4 三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震活動の評価(平成12年8月9日)

○ 地震活動は、8月2日以降も三宅島付近から新島・神津島付近にかけて消長を繰り返しながら継続している。特に、8月3日から5日にかけて、神津島東方海域を中心にして、M5.0以上の地震3回を含む地震活動が活発化し、最大震度5強2回及び最大震度5弱6回を観測した。

8月9日現在も、地震活動が活発な領域は、三宅島西方沖から新島・神津島東方沖の海域(以下「第一の海域」という。)、利島西方沖から神津島付近の海域(以下「第二の海域」という。)、及び三宅島南西沖から御蔵島南西沖の海域(以下「第三の海域」という。)の3つとなっている。

○ 周辺のGPS観測の結果では、8月2日以降も引き続き、新島・神津島、利島、伊豆大島及び房総半島南端まで地殻変動が観測されている。特に、8月3日から5日にかけては、新島、式根島、及び神津島で地殻変動が一時的に加速したが、その後、変動レベルは7月中頃と同様となっている。

○ これらの地殻変動及び第一の海域の地震活動は、地殻変動と第一の海域の地震活動との連動性、地震発生域の分布、発生している地震の発震機構の特徴から、8月2日の評価と同様に、主として神津島の東方海域の地下での岩脈状のマグマの活動に関連して発生したものと考えられる。また、同様にして、第二の海域及び第三の海域の活動は、主として第一の海域におけるマグマの活動及び地震活動によって誘発されたものと考えられる。

○ M3.5以上の地震の日別の平均発生回数は、第一の海域では6月26日から7月13日まででは約60回であったが、7月14日以降8月8日までは約30回に変化した。しかし、その一方で、神津島東方のマグマ活動を示唆する新島・式根島・神津島の地殻変動は、上述のように8月3日から5日に急速な変化があり、さらに、従来の変化と同程度に戻り、傾向を大きく変えることなく依然として継続している。

○ このため、地殻変動が継続している現状では,8月3日から5日にかけてのように、比較的大きな地震が短時間にまとまって起こることもまだあると考えられる。また、同様にして、これまでに発生したと同規模(最大でM6程度)の地震が起こり、発生場所によっては震度6弱となることも現時点では否定できない。

○ このようなことから、今後の地震活動及び地殻変動の推移を見た上で、1〜2週間後に改めて評価することとしたい。




2000年7月の地震活動の評価についての補足説明

平成12年8月9日
地震調査委員会

1 主な地震活動について

日本及びその周辺域では、M4.0以上の地震の発生は431回(6月は148回)、三宅島付近から新島・神津島付近の地震を除くと63回(昨年末までの30年間の月平均は43回。)観測され、内M5.0以上の地震の発生は39回(6月は17回)であり、三宅島付近から新島・神津島付近の地震を除くと11回であった。7月は、三宅島付近から新島・神津島付近にかけての地震が数多く発生しているが、それを除いても、平均よりも発生数が多くなっている。また、M6.0を超える地震の発生は、1997年から1999年の間で、年に平均11回(台湾付近の地震を除くと8回)発生しているが、今年は7月末までで、15回発生している(そのうち、三宅島付近から新島・神津島付近のM6以上は4回)。
昨年3月以降本年6月までの主な地震活動として次のものがあった。
−新島・神津島近海 1999年3月14日M4.7(深さ10km以浅)、
1999年3月28日M5.0(深さ20km以浅)
−釧路支庁中南部 1999年5月13日M6.4やや深発地震(深さ約100km)
−和歌山県北部 1999年8月21日M5.4(深さ約70km)
−台湾 1999年9月21日M7.7(米国地質調査所による。)
−瀬戸内海中部 1999年10月30日M4.5(深さ約15km)
−熊本県熊本地方(深さ約10km)、福井県沖(深さ約15km)及び
 愛知県西部(深さ約50km)で1999年11月にM4.0を超える地震
−北海道東方沖 2000年1月28日M6.8(深さ約60km)
−北海道胆振支庁(有珠山周辺)
2000年3月30日M4.3(深さ約10km以浅)
及び4月1日M4.6(深さ約10km以浅)を始めとする火山活動に関連する地震活動
−千葉県北東部 2000年6月3日M6.0(深さ約50km)
−石川県西方沖 2000年6月7日M6.1(深さ20km以浅)
−熊本県熊本地方 2000年6月8日M4.8(深さ約10km)

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2 各地方別の地震活動

(1) 北海道地方

北海道地方では、次の地震活動があった。
−7月10日に、オホーツク海南部でM5.7の深発地震。

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(2) 東北地方

東北地方では、次の地震活動があった。
−7月8日に、三陸沖の海溝軸の外側でM4.8、7月20日に三陸沖(宮城県の沖合)でM5.2、7月31日に三陸沖(岩手県の沖合)でM5.2の地震。
−7月1日に福島県沖で、M5.1の地震。

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(3) 関東・中部地方

「静岡県中部の、沈み込むフィリピン海プレート内の地震活動は、昨年の8月以来の低い活動レベルの状態が続いている。」:
静岡県中部のフィリピン海プレートの地震(M1.5以上)の発生頻度が、平均して1ヶ月に6回程度であったものが、1999年8月頃から1ヶ月に2〜4回と平均より少ない状態となり、その後、まだ活動レベルが低い状態が続いている。
(なお、本評価結果は、8月1日に開催された地震防災対策強化地域判定会委員打合会における見解(参考参照)と同様である。)
(参考)最近の東海地域とその周辺の地震・地殻活動(平成12年8月1日気象庁地震火山部)
「 東海地域においては、地殻内および潜り込むスラブ内において目立つような地震活動はなく全般的に静かな状況が続いています。駿河湾およびその西岸域の地震活動は、回復の傾向が認められますが、全体としてはなお活動の低い状態が継続していると考えられます。三宅島の火山活動、新島・神津島付近の地震活動等による僅かな量の体積歪変化が東海地域で観測されていますが、現時点では、東海地域の地震活動、地殻変動に影響を与える可能性はありません。」

−6月3日に発生した千葉県北東部の地震(M6.0)のその後の活動は、本震−余震型で推移しており、7月19日にはこれまでで最大のM4.2の余震が発生した。余震活動は次第に減衰している。
−6月7日に発生した石川県西方沖の地震(M6.1)のその後の活動は、本震−余震型で推移しており、余震活動は次第に減衰している。

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(4) 近畿・中国・四国地方

近畿・中国・四国地方では、特に補足する事項はない。

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(5) 九州・沖縄地方

−6月8日に発生した熊本県熊本地方の地震(M4.8)のその後の活動は、次第に減衰している。

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参考1 「地震活動の評価」において掲載する地震活動の目安
  M6.0以上のもの。又は、M4.0以上(海域ではM5.0以上)の地震で、かつ、最大震度が3を超えるもの。

参考2 「地震活動の評価についての補足説明」の記述の目安
1 「地震活動の評価」に記述された地震活動に係わる参考事項。
2 「主な地震活動」として記述された地震活動(一年程度以内)に関連する活動。
3 評価作業をしたものの、活動が顕著でなく、かつ、通常の活動の範囲内であることから、「地震活動の評価」に記述しなかった活動の状況。