広報小委員会報告書「地震調査研究推進本部における広報の在り方について」(案)
の意見募集と修正について


平成9年6月16日

地震調査研究推進本部

政策委員会

広報小委員会


1.広報小委員会は、別紙1の実施要領により、広報小委員会報告書案を公開して、4月22日から5月18日までの27日間に22の御意見を頂きました。頂きました御意見は別紙2のとおりです。

2.広報小委員会は、頂いた御意見を検討し、報告書の修正を行うとともに、御意見についての広報小委員会の考え方を別紙3のとおりとりまとめました。

3.頂いた全ての御意見は、報告書の作成のみならず、地震調査研究推進本部の今後の全般の活動に反映されるよう、各委員会に送付します。また、関係する行政機関等にも、参考とするよう送付することとします。

別紙1:広報小委員会報告書案の公開と意見募集について
別紙2:頂いた御意見
別紙3:頂いた御意見についての広報小委員会の考え方



別紙3

頂いた御意見についての広報小委員会の考え方


「1.地震調査研究についての広報の現状」についての意見(意見数1)


〇これまでの地震調査研究に対する広報の問題点の指摘と解明はなされているのか。(13)


阪神淡路大震災を契機として議員立法として成立した地震防災対策特別措置法に基づき、総理府に地震調査研究推進本部(以下「推進本部」という。)が設置されています。
推進本部は、総合的な地震調査観測計画の策定、関係省庁の地震に関する調査研究予算等の事務の調整等を行うほか、各観測機関の調査観測結果の総合的な評価を行うことにより、地震調査研究を一元的に推進することとしています。
阪神淡路大震災の教訓のひとつとして、地震調査研究の成果が国民と防災を担当する行政機関に十分伝達され、活用されるような体制であったのかという反省がなされました。このため、地震防災対策特別措置法第7条2項5号において、推進本部は調査観測結果等の総合的な評価に基づき、広報を行うことが規定されています。
また、同法13条には、国は地震防災に関する科学技術の振興を図るため、必要な研究開発を推進するとともに、その成果の普及につとめるべきことが規定されています。
このような地震対策特別措置法の規定と推進本部の設立に至る経緯を踏まえて、本小委員会は、推進本部における広報の在り方を検討しました。
本小委員会での検討に当たって、具体的には、

・地震調査研究についての広報の基本目標が明確でないこと

・地震調査研究の成果の実状等の地震についての基礎知識の普及が十分でないこと

・推進本部の地震調査委員会の評価を十分に広報する必要があること

・地震発生の可能性の評価等についての情報は、時として社会や生活に及ぼす影響が大きいこと

・新たな知見や技術を広報に活用すべきこと等について検討し、その結果を報告書にまとめています。

「2.地震調査研究についての広報の基本目標」についての意見(意見数1)


〇広報の基本目標に賛成する。(5)


本報告書では、我が国においては、被害をともなう地震は避けられないが、その被害を最小限にする、という視点に立ち、地震に対応していくという考え方を「地震との共存」と呼び、その意識の普及と定着を地震調査研究についての広報の基本目標としています。
防災を担当する行政機関のみならず、最終的に地震による被害のリスクを負う国民が自らの安全を確保するためにも、このような意識を持つことが重要であると考えています。

「3.地震調査研究について広報すべき事項」についての意見(意見数7)


〇地震の発生に係る情報に加えて 「家屋や建物や地盤などの地域別の大略の被害概要」など地震工学に係る事項についても広報を行う必要がある。(1)


過去に発生した地震による被害の概要等についても、地震についての基礎知識として広報していきます。

「3.(1)地震についての基礎知識の普及」についての意見


〇東海地震の予知についても研究者の間に大きな意見の隔たりがあり、「短期的な地震予知は一般的に研究段階にある」の「一般的に」は削除すべきである。(16)


地震予知について精力的に研究が行われている中で、東海地震については、大規模地震対策特別措置法に基づき、地震予知情報及び警戒宣言に基づいた対策がとられるようになっていることから、報告書の表現で妥当と考えています。

「3.(2)長期的な地震発生の可能性の評価についての広報」についての意見


〇歴史地震とその災害の実体、および近代地震災害の特徴に関する広報活動も行うべきである。(6)


推進本部の地震調査委員会では、被害を及ぼす地震という観点から、これまでに得られた知見に基づき、地震活動の特徴を地域ごとに取りまとめて公表することとしています。この中で、歴史地震や最近の地震も含めて、被害の概要を取りまとめているところです。


〇数百年の幅でとらえられている地震発生の可能性について、表現方法を再検討するべきである。(2)


地震発生の可能性の評価の在り方については、広報の問題も視野に入れながら、現在、地震調査委員会の長期評価部会で検討されています。この検討を踏まえて、適切な表現に努めることとします。

「3.(3)発生した地震に関する情報の迅速な広報」についての意見


〇地震に関するリアルタイム的な情報の発表は、これまで防災関連機関が行っており、推進本部が行うとした場合、重複、混乱が懸念される。緊急防災に関する広報は防災関係機関にまかせ、推進本部は、その支援にまわり、知識普及型広報を担当するべきではないか。(5、7、10)


国民、地震防災関係機関が、地震発生直後に地震に関する情報を把握することが出来れば、地震による被害の軽減を効果的に図ることができるものと期待されます。
このためのシステムの構築、運営等の在り方については、その実施主体も含めて推進本部と地震防災関係機関において今後検討されるものと考えています。
御意見を踏まえてより精確な表現となるよう報告書を修正します。

3.(3)の2段落目
修正前:気象庁では、地震発生直後に地震に関する情報を報道機関を通じて広報している。さらに、地震防災関係機関や国民が、地震発生直後に地震についての情報をリアルタイムで知ることができれば、各地の被害を迅速に把握する等して、応急・復旧対策を効果的に実施し被害を軽減することができる。このため、様々な観測網のデータをリアルタイムで収集し、地震についての詳細な情報を地震発生後に即時に決定し、それをリアルタイムで地震防災関係機関に通知し、報道機関を通じて国民に伝達することを検討することが重要である。
修正後:気象庁では、地震発生直後に地震に関する情報を他の地震防災関係機関に通報するとともに、報道機関を通じて発表している。さらに、国民と地震防災関係機関が、地震発生直後に地震についての詳細な情報をリアルタイムで知ることができれば、各地の被害を迅速に把握することにより、避難活動、自主防災活動、ボランティア活動を効果的に実施し、被害を軽減することができる。このため、様々な観測網のデータをリアルタイムで収集し、地震についての詳細な情報を地震発生後に即時に決定し、それをリアルタイムで地震防災関係機関等が把握して、防災活動に役立て、報道機関等を通じて国民が知り、自らの安全を確保することについて、地震防災関係機関とともに検討をすることが重要である。

「4.当面実施する広報」についての意見(意見数7)


「4.(1)地震についての基礎知識の普及」についての意見


〇1)広報する事項「○地震についての基礎知識」の「地震防災関係機関や国民」では「国民」が付け足しの印象を与え、また、公共事業に地震調査研究の成果が反映されることが重要であるため、「国民、地震防災関係機関、国土計画・公共事業関係機関等」に修正すべきである。(18)


御意見を踏まえて報告書を修正します。

4.(1)1)
修正前:地震防災関係機関や国民に普及させる。
修正後:国民に普及し、地震防災関係機関等に周知させる。



〇過去の大きな地震について、各地で何十年、百年などの時期に、防災機関、地元自治体、報道機関と協力してイベントを行い、震災記憶の風化を防ぎ、地震知識の普及と防災意識の向上をはかるべきである。(8)


意見を踏まえて報告書を修正します。

定常的に行う広報の事例の3.広報資料の活用等に追加:
・過去の大きな地震から何十年、百年等を経た時期に、地震防災関係機関、地元自治体、報道機関等と協力して広報を行い、震災記憶の風化を防ぎ、地震知識の普及と防災意識の向上を図る。



〇地震についての基礎知識の普及として、体積歪計(石廊崎、藤枝)の異常を例にとって体積ひずみ計の解説、伝達手段の検討が必要である。(21、22)


地震に関する基礎知識の普及として、体積歪計等、地震の観測計器についても解説を行います。
地震防災関係機関の行う地震に関する情報伝達についての意見は、関係する機関に伝えます。

「4.(2)長期的な地震発生の可能性の評価についての広報」についての意見


〇地震発生可能性の評価を行う場合には、評価を行う委員会の構成員の選出方法が専門家の納得できるものでなければならない。(9)


推進本部の各委員会については、十分な審議を行えるよう、関係行政機関の職員と第一線の学識経験者で構成することとしています。


〇地震発生の可能性の評価等の情報については、いろいろな意見を明記したうえでの評価を行うべきである。評価に至った経緯もわかるよう広報すべきである。(4)
〇地震発生の可能性の評価についての広報では、広報の責任の所在をあきらかにするため、また、地震予知が研究レベルであり多くの異なる意見がある以上、「社会的問題が発生する恐れがある場合には適切な広報」を「推進本部が社会的問題が発生する恐れがあると判断する場合にはその情報に関連した幅広い情報の提供」に修正すべきである(17)



地震の発生の可能性等の情報の広報については、いろいろな意見や評価に至った経緯をあわせて広報することが適当である場合があると考えていますが、広報は、様々な場合と状況に応じて適切に行う必要があるものと考えています。
推進本部が広報を行う場合にはもちろんのことですが、地震発生の可能性に関する情報が公にされる際には、社会問題が発生しないようにとの観点からの注意が払われるべきであると考えています。
意見を踏まえ、より精確な表現となるよう報告書を修正します。

4.(2)2)〇地震発生の可能性の評価等の情報についての2段落目
修正前:他方、地震発生の可能性の評価等についての情報は、時として社会生活に及ぼす影響が大きいことから、学問と報道の自由に配慮しつつ、社会的問題が発生する恐れがある場合には適切な広報を行っていく必要がある。
修正後:他方、地震発生の可能性の評価等についての情報は、時として社会に及ぼす影響が大きいことから、学問と報道の自由に配慮しつつ、社会的問題が発生しないよう適切に広報がなされる必要がある。

4.(2)2)〇地震発生の可能性の評価等の情報についての3段落目
修正前:国民が大きな不安を抱くと予想されるような事態が生じた場合には、
修正後:国民が大きな不安を抱くような事態が生じた場合には、

「5.当面の広報手段」についての意見(意見数7)


〇交通の遮断等の適切な処置を迅速に可能にする正確な強震動(予測)情報を準リアルタイム地震情報の各EmergencyOfficeへ提供し、各機関の独自のシステムにおいて情報が得られるようにするということは可能であると思う。

また電気・ガス等の迅速な復旧・再開にも準リアルタイム地震情報が活用できる。
当面実施すべき広報として、「地方自治体の長、消防、警察、ならびに民間の電気・ガス・鉄道会社等の公共的会社への、準リアルタイム地震情報の提供」をあげるべきである。(12)



推進本部が推進している地震に関する基盤的調査観測等の成果は、地震による被害の軽減のために広く活用されることが期待されており、御意見は、今後のリアルタイムでの地震に関する情報伝達の検討の際の参考とするとともに関係機関に伝えます。

「5.(1)直接的な広報」についての意見


〇地震調査委員会などを公開審議にして どれだけ幅の広い意見があるかを国民に知らせることがもっとも有効な広報であることから「各種委員会の審議の公開」を入れるべきである。(19)


審議の公開は、審議の内容と関連するため、御意見を推進本部の各委員会に伝えます。
なお、推進本部は、地震調査委員会が毎月開催する定例会と、緊急に総合的な評価を行うために開催する臨時会の終了後に、会議の結果と審議の様子を報道機関との会見で伝えるとともに、速やかに、地方自治体等への説明会を開催する等、委員会の審議についての広報に努めています。


〇情報提供のルートは現時点で複数存在し、受け手の国民が混乱している。推進本部は、地震予知連絡会、地震防災対策強化地域判定会および気象庁等の機関独自の広報についてどう位置づけるのか。(20)
〇地震予知連絡会と地震調査委員会の役割は重複するのではないか。(15)


地震調査研究の成果が、国民や防災を担当する行政機関に十分に伝達され、活用されるような体制であったかとの反省にたち設立された推進本部は、地震についての総合的な評価結果を、積極的に国民に周知していくこととしています。
すなわち、地震調査委員会は、地震防災対策特別措置法に基づき、地震に関する観測、測量、調査又は研究を行う関係行政機関、大学等の調査結果等を収集し、整理し、及び分析し、並びにこれに基づき総合的な評価を行っています。推進本部は、この評価結果を、地震防災関係機関へ説明するとともに、報道機関を通じて広報しています。
一方、気象庁は、気象業務法に基づき、津波の予警報や、地震情報等の防災情報発表業務、並びに地震防災対策強化地域判定会の運営、地震予知情報の内閣総理大臣への報告等の東海地震の予知のための業務等を行っています。推進本部が企画・調整等を行うに当たっては、気象業務法に基づく業務が円滑に実施されるよう配慮しなければならないこととなっています。
地震予知連絡会は、建設省国土地理院長の私的諮問機関として設けられているものであり、地震調査研究のうち、地震予知の分野に関する情報の交換と検討を、学術的見地から行っています。地震予知連絡会の検討結果は、地震調査委員会での地震の評価資料としても使われており、総合的な評価の結果が推進本部から広報されています。


○インターネットは今後一層混雑することが予想されている上に、WWWによる広報手段は多数のアクセスがきたときに機能不全に陥るなどの問題がある。衛星通信の放送機能等を利用して、必要な情報を常時提供し、受信側でパソコン等を利用してデータベース化して利用するタイプの専用の分散型の広報手段を整備すべきである。(11)


推進本部は、インターネットによる広報を充実させていくとともに、技術開発の進歩等を踏まえ、より確実で迅速な広報手段について検討していきます。

「5.(2)間接的な広報」についての意見


〇気象庁の週間地震概況での例のように情報を公表しても、報道機関の判断によって国民に十分に内容が報道されていない現状をどう改善しようとしているのか。(14)
〇繰り返し地震情報に接することが地震に対する意識の広報に不可欠であり、気象情報のように新聞、テレビで毎日定期的に地震情報を報道してもらうよう働き掛けるべきである。(3)



多様な手段によって多くの国民に情報を伝えられることから、報道機関に期待される役割は非常に大きいと考えています。また、きめ細かな広報を行う観点から、地方自治体に期待される役割が大きいものと考えています。
このため、住民に定期的な広報が行う等の積極的なとりくみがなされるように、報道機関、地方自治体等と緊密に連絡、意見交換を行うこととしています。